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非金融分野まで広がるブロックチェーン3.0(海外および不動産取引編)

福田
2020/05/16

イスラエルはブロックチェーン先進国

じゃあ、ブロックチェーンが全く普及していないかというとそんなこともないです。例えば、ITの分野で急速に発展してきているイスラエル、気が付いたらあっという間にブロックチェーン先進国になっていました。ちょっと古いデータですが、イスラエルでスタートアップと投資家のマッチングプラットフォームを運営しているAniwoが紹介している記事では、2017年の資金調達額 Top10 のプロジェクトが紹介されています。ブロックチェーン関連では、第3位にSIRIN LABSが1億5,700万米ドルを集めて入っています。このスタートアップではブロックチェーンスマートフォンと OS の開発を進めています。実は、SIRIN LABS JAPANは、セキュリティに特化したブロックチェーンスマートフォン「FINNEY」を販売する直営店を銀座にオープンしており、我々の身近な存在になっています。

また、トークンの流動性担保プラットフォームを開発する Bancorも第4位に入っています。SIRIN LABと提携を結んだ開発をしており、知らず知らずのうちに身近な存在になってきています。これらの事実は、時代の流れに敏感な投資家たちがブロックチェーンの将来性に着目していることを示しており、それに伴って技術開発が急速に進んでいます。

技術的な優位性はもちろんのこと、海外とくにイスラエルのスタートアップの見習いたい点は実行力です。よくPDCAといいますが、多くの日本の大企業が企画立案に時間をかけて、なかなか実行しない間に実行力のある企業はどんどん進めていきます。もちろん、実行さえすれば良いという話ではないですが、”実行→アイデア”の再精査を繰り返すことでビジネスモデルの精緻化や机上の空論ではない技術の優位性の発揮に繋がっていくと考えています。ブロックチェーンの分野では、日本企業の活躍の場がたくさん生まれることを祈っています。

不動産取引へのブロックチェーンの適用

ここからは、ブロックチェーンを活用した不動産取引の実態を紹介します。一度でも不動産取引を経験した人は分かると思いますが、印鑑署名や住民証など、どうしてこんなに書類が必要なのかとうんざりします。日用品と違って購入頻度が圧倒的に少ない不動産取引ではこのようなアナログのやり方が主流でしたが、そのような状況に対してブロックチェーンで風穴を開けようという取り組みが進んでいます。

前述の金融業界と違って元々アナログな分野はデジタル化の移行に合わせてブロックチェーンへの検討もできるという点もあり、デジタル化の移行と合わせて一気に進む可能性があります。色々ありましたがOYO LIFEが始めた新しい賃貸住居の在り方などはデジタル化の移行の一例でしょう。このような流れで不動産業界全体にも広がっていくと個人的には期待しています。

不動産取引では、その人がどういう人でローンをちゃんと払ってくれるかなどをしっかりと確認しています。そのため、現状のやり方では色々な書類が必要になってきて、煩雑かつアナログな手続きになっています。

例えば、不動産業界大手の積水ハウスはKDDIや日立製作所と連携して、賃貸の入居に関してブロックチェーンを導入する仕組みを検討しています(関連情報)。このようなシステムでは本人確認情報を相互補完することで、固定電話や電気、ガス、水道といった転居に伴う複数申し込みの一括化などの手続きの簡便化やサービスのワンストップ検証など新しい賃貸プラットフォームの構築をネスモデルやサービス性についても検証します(下図を参照)。一つ一つの技術やユーザーメリット、課題などの精査が必要ですが、こういった一つ一つの取り組みがブロックチェーン技術の社会実装につながっていきます。

ブロックチェーンを活用した不動産情報コンソーシアム「ADRE」

次に不動産大手のLIFULLとNTTデータ経営研究所が始めた不動産ブロックチェーンコンソーシアム「ADRE:Aggregate Data Ledger for Real Estate」を紹介します。このコンソーシアムでは、不動産権利と本人認証を組み合わせた不動産売買システムを構築しようとしており、権利移転アプリケーションを用いて所有権トークンを交換するだけで不動産を売買できます。不動産会社にとっては情報の質を高めたり、業務の効率化につながります。また、住宅を売買する人にとっては簡易なアプリでトークンの交換ができるというメリットがあります。

このような新しいプラットフォームはオープンイノベーションの一つの成果であり、単独企業ではできないような事業につなげられるということから新しいエコシステムを構築できると期待できます。本コンソーシアムの実証試験は2017年12月に開始して、ゼンリン、全保連、三菱UFJリースなども参加した8社で設立に至っています。

また、次なる展開として高齢化社会の到来に伴って社会課題となっている空き家問題の解決にも展開しています。市場価値が限りなくゼロになってしまった不動産を所有者から無償譲渡してもらって実証実験を行っています。こういった取り組みで日本が抱えている課題の解決につながっていくと期待しています。

これ以外にも、トヨタ自動車もトヨタファイナンスサービスと共同で「トヨタ・ブロックチェーン・ラボ」を設立して、不動産関連も含めて精力的に活動しています。

この記事を書いた人
福田
エディター