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非金融分野まで広がるブロックチェーン3.0(海外および不動産取引編)

福田
2020/05/16

海外で続々と進むブロックチェーンを活用した不動産取引

ブロックチェーンの活用は前述のように国内でも徐々に実証試験が進んでいますが、海外ではもっと積極的に実用化へ向けた動きが加速しています。

1.アラブ首長国連邦

2018年4月にエミレーツ・ブロックチェーン戦略2021を発表しました。アラブ首長国連邦政府はブロックチェーンの普及を精力的に進めており、この戦略ではビザ申請や請求書の支払いなどの手続きの50%をブロックチェーンプラットフォームで行うという内容になっています。また、韓国企業ブロッコ(Blocko)がブロックチェーンシステムを構築しています。不動産取引に限定される仕組みではないですが、広く社会システムの中の売買をブロックチェーンで行えるように取り組んでいます。

2. 中国

不動産ディベロッパーの新世界発展(New World Development)と香港応用科学技術研究所(ASTRI: Hong Kong Applied Science and Technology Research Institute Company Limited)は、住宅購入者向けのブロックチェーンプラットフォームを設立しました。このプラットフォームでは不動産売買時に必要な売買契約書や住宅ローン申請書への署名などの書類業務をデジタル認証に置き換えようとしています。

3. イギリス

209年4月からバークレイズ銀行とスコットランド王立銀行が、ブロックチェーンを用いた不動産購入実験を始めています。ここでは、合計40社が参加しており、フィンテック企業R3の分散型台帳技術であるコルダ(Corda)を採用したインスタント・プロパティ・ネットワークのツールを利用しています。このような仕組みを通じて、不動産購入時に多くの企業や政府機関とのやり取りをする煩雑で面倒くさいプロセスをなくそうとしています。

4. スイス

ブロックチェーン不動産取引プラットフォームのブロッキモ(blockimmo)が、ほか2社と共同でブロックチェーンを用いた不動産取引を行っています。最初の取り組みとして、住居18件とレストラン1件の合計300万スイスフランの不動産取引を、トークン化してブロックチェーンベースで実施しています。

5. アメリカ

2019年5月からブロックチェーンを活用した住宅ローンサービスの提供が開始しています。例えば、Propy Inc.はブロックチェーン技術を用いたオンライン不動産取引サービスである「Propy」を開発いています。ここでは、複雑な手続きを伴う不動産の国際取引をブロックチェーン上で管理することで取引の効率化・流動性を高めることを目指しています。また、2019年11月から米州開発銀行は中南米3カ国で土地登記と貸付をブロックチェーンで運用する2年間のプロジェクトを開始しました。

6. マルタ共和国

2019年6月23日にJoseph Muscat首相はラジオのインタビュー番組で、「内閣により承認された賃貸法改正により、マルタにおける全ての不動産賃貸契約はブロックチェーンに登録することが必要になる」と語っています。ブロックチェーン島として知られているマルタ共和国では今後このような取り組みが積極的に進んでいくと思われます。

まとめ

今回はブロックチェーンに関する国内外の動向を紹介しました。多くの人が知らないうちにブロックチェーンを用いたシステムが世界中に構築されつつあり、気が付いたときにはこのような仕組みが当たり前の世の中になることも想定されます。また、ブロックチェーンの技術が進んで、我々の社会システムが使いやすいことになることを期待しています。

この記事を書いた人
福田
エディター