未来を創る、テックコミュニティー

コーヒー1杯から世界を眺める

かみゆー
2021/06/03

シンラボ学生メンバーのかみゆーです。

今年に入ってより一層SDGsが様々なメディアや広告で取り上げられ、SDGsという言葉を見聞きしない日はないように思います。

シンラボの中で主に学生向けのSDGsワークショップの企画を行っている私ですが、社会課題の解決に貢献していくためには、まずは自分自身が社会課題をもっと理解していかなければならないと日々感じています。

本やニュースなどから学んだことをもとに、このブログでは私たちが意外と知らない社会課題や、私たちにできるSDGsアクションについて発信します。

今回の記事では、たった今このブログを書きながら飲んでいるコーヒーに関する社会課題について取り上げます。

1杯100円のコーヒーが児童労働につながっている⁈

1杯100円のコーヒーを飲むことによって、児童労働や子どもの教育の機会が奪われることにつながる可能性があります。

こんなことを言われたらこれからゆっくりとコーヒーを飲めなくなるではないかと思われてしまいそうですが、私は決してコーヒーを飲むなと言いたいのではありません。

私もコーヒーが好きだからこそ、この話題を取り上げました。

Jose.川島良彰他著「コーヒーで読み解くSDGs」をもとに、1杯100円のコーヒーと子どもの教育の機会が奪われることの繋がりを紐解き、その上で私たちにできることを一緒に考えたいと思います。

コーヒー市場価格低下が及ぼす様々な影響

近年、低価格のコーヒー豆に対する需要が世界中で高まっています。これまでコーヒーの消費量が少なかった地域でコーヒーブームが起きることで、品質よりも価格を重視して、巨大な企業が大量のコーヒー豆を生産国から直接買い付ける動きが見られます。

低価格のコーヒー豆に対する需要が高まっていくと、生産者は次第に高品質のコーヒー豆を作ることへのインセンティブを失い、品質の低い豆を大量に生産するようになります。現に、ブラジルやベトナムでコーヒー豆の輸出が増加し取引価格の低下を招いているのは、このような背景があるそうです。

このままコーヒー豆の買い付け価格の低下が止まらなければ、中南米やアフリカ、東南アジア地域に広がるコーヒー農家の収入は減少していきます。

コーヒー農家にとって収入の減少は、生活の苦しさに直結することになります。コーヒー価格が大幅に下落した2001年のコーヒー危機の際には、中南米の多くのコーヒー生産者の暮らしが立ち行かなくなり、多くの人々が慢性的な飢餓に陥りました。

コーヒー農家の子どもは、生産スピードを高めるために親の仕事を手伝わなければならず、学校に通えなくなる可能性があります。冒頭に述べた1杯100円のコーヒーと児童労働は、このようにつながっています。

また、コーヒー栽培と家事を両方行う女性の仕事に対して適切な報酬が与えられず、時間、お金の面で女性の社会進出を阻害することにもつながります。

コーヒー業界の取り組みと私たちに出来ること

このようなコーヒー生産における社会問題を解決するためには、生産者側は「国際的な認証プログラムを取得すること」、消費者側は「認証プログラムを取得した製品を選ぶこと」が重要になります。

国際的なネットワークをもつ認証団体では、環境、社会など様々な側面から農園や企業に対する審査を行っています。

特にレインフォレスト・アライアンスが審査対象とする基準は、「森林・気候・人権・生活水準」に焦点を当てており、幅広いSDGsの目標をカバーしています。コーヒーに限らず、カカオ・茶類・果物など認証を受けた製品には、カエルのマークが貼られています。

また、大手コーヒー企業では第三者機関による農園の審査と農家への支援を組み合わせた独自の調達プログラムを設定しています。

例えば、スターバックス社の調達モデル「C. A. F. E. プラクティス」では、品質基準や経済的な透明性に加えて、生産者の労働環境を守り生活向上に貢献すること、生産地の環境への影響を抑えることが定められています。

このようにコーヒーを飲まないという選択をするのではなく、企業などのSDGsの取り組みを知って正しい消費行動を選択することで、コーヒー農家の持続可能な生産に貢献することができます。

世界はつながっている

今回の記事では、コーヒー業界における社会課題とそれを解決するための取り組みについて触れました。

身の回りの物や私たちの行動には、自分が気付かないところで様々なリスクがあります。しかし、少しずつでも自分の生活と世界のつながりを学んでいくことによって、「この行動はまずいのでは?」と踏みとどまり、正しい選択を自然と行えるようになるのではないかと考えます。

また、見せかけではなく本気で社会的責任を追及して課題解決のリーダーシップをとっている企業を消費行動で応援することは、結果的にSDGsの達成に貢献するアクションとなり得るのではないかと思います。

私も思わぬところで環境破壊や人権問題に加担しないために、まずは自分が日々消費しているものについて、それがどのような過程を辿って生産されているのか学び、考える習慣を身に付けていきたいと思います。

◾️ 参考文献

Jose.川島良彰, 池本幸生, 山下加夏, 「コーヒーで読み解くSDGs」, ポプラ社, 2021

この記事を書いた人
かみゆー
エディター