未来を創る、テックコミュニティー

大事なことはSDGsを通じて何を伝えたいか。

シンラボ編集部
2019/09/16

※本記事は、未来技術推進協会ホームページにて2018年12月7日に掲載されたものです。

未来技術推進協会ではSDGsの活動に力を入れていて、オリジナルボードゲームを制作したり、SDGsワークショップというイベントも開催しています。
SDGsについて活動をしている方や団体についてもインタビューを行い、活動を発信する場としても貢献できればと考えています。
今回は、会社で働きながら、個人でもSDGsのワークの講師やワークショップデザイン等の様々な活動を行っている田幡祐斤(たばたまさのり)様にインタビューを行い、SDGsやその想いについてお伺いしました。


まずはじめに様々な活動されていると思うのですが、どんな活動をされているのか簡単に教えて頂けないでしょうか?

田:やっていることは大きく3つあります。
1つ目は、株式会社アルヴァスデザイン、企業向けの人材開発支援(研修、プロジェクト企画)、その営業やプログラム開発を担当しています。
2つ目は、elsa、非営利の環境教育団体です。持続的な開発、持続可能な社会づくり、環境教育等をテーマにして、一般の方向け、中高校向けにワークショップ開催、学習プログラム提供など、環境教育の促進をやっています。
3つ目は、個人の活動で、ワークショップデザイン、ファシリテーターとしての活動をしています。市民団体の社会活動の場でファシリテーターをするような、楽しむことを目的にしたワークショップを開催しています。

活動としては大きく3つあるあるんですが、ビジョンとしては「自然にやれば自然にうまくいく。そんな社会、組織、人ができる」といいと考えています。

様々な活動をされていてすごいですね。

活動している内容を聞くと、人に伝えていくのがキーワードだと思ったのですが、昔から興味あったのでしょうか?

田:元々興味は全く無かったです。
むしろ人よりも動植物の方が好きなくらいですね。
学生時代は東京農工大学農学部に通っていて、生き物が好きで、彼らを守る活動(自然保護、環境保全、サスティナブルな活動)を始めたのが出発点でした。
ただ、活動をしていく中で、環境を守るためにはまず人間を何とかしなければと感じました。
当時は、環境を守ろうというストレートなメッセージを伝える活動をしていたのですが、なかなかうまく行かなかったです。

学生時代からそういう観点で活動されているのは素晴らしいですね。学生を卒業してからはそういうメッセージを伝えていくような仕事に就いたのでしょうか?

田:実は全然違くて、新卒ではアパレル・セレクトショップの販売員をやっていました。
当時、ファッションにもとても興味があったのと、モノを売る経験がどの仕事にも不可欠だと思って就職をしました。
3年半働いた中で、販売員や店長も経験することができました。
ただ、店長やっていたときはとてもハードに仕事をしていて、個人(自分)の営業売上、成績は良かったが、自分の経験が絶対的な指針となるようなパワーマネージメントをしていました。
そのやり方がスタッフを疲弊させてしまっていることに気づきました。

今の柔らかい雰囲気からするととても意外です。

アパレル店長時代の経験がきっかけで変化

田:どうやったらその状態を改善できるのかと考えていたところ、人材開発の業界に出会いました。
働きがいや、やりがい、売上も上がるような好循環を生み出す仕組みや手法を体系的に伝えることができると想い、転職することにしました。

人に伝えていくことのきっかけが店長の経験がきっかけだったのは意外でした。
そういう経験から研修やワークショップ等に興味を持たれたのですね。

SDGsとの出会い

SDGsに関するワークショップやイベントをelsa様や個人でも活動されていると思うのですが、SDGsを知ったきっかけは何だったのでしょうか?

田:最初、何で知ったのかはあまり覚えていないのですが、元々「環境」、「持続可能な社会」というキーワードに興味があったから、自然と入ってきました。
SDGsは深い意味で理解して共有するよりも、「肌感覚でこういうのいいよね!」という共通の感覚を持って、パートナーシップを組めることに可能性や魅力を感じたのを覚えています。

田幡さんが感じるSDGsの大切なポイントや良い点はどんなところでしょうか?

田:大きく3つ感じていることがあります。
1つ目は、Sustinable Development Goalsという目標になっているので、達成したかしていないかが明確なのが良い。
今までの環境活動は、環境守ろうという「姿勢」が協調されていたのですが、具体的に「数値」が明確なビジネスに負けてしまっていることが多かった。
それが、目標となったことで、環境活動も経済活動も社会活動も「数値」で達成するという同じ立ち位置に立てたことが良いと感じています。
2つ目は、様々な団体がつながりやすいという点。
SDGsが出来る前は、海、山といった別々の場所やジャンルで活動していた組織が、SDGsという共通言語が生まれたことで、一緒に活動することが出来るようになりました。
自然を守ろうというビジョンがあれば、それに向けて協力しようという風土が作りやすくなり、お互いの強みも活かし合えて、つながりが増えるのはとても良いことだと思う。

3つ目は、ポジティブアプローチであること。
今までの社会・環境に対する活動は、「危機感」や「怒り」といったネガティブな感情を原動力としていたことが多かった。
それだけでは活動自体が持続しないし、対立もおきてしまっていたこともあります。
SDGsにはみんなでわくわくする未来をつくっていこう、というようなポジティブにステークホルダーを巻き込む力や前提があるのがとても良いと思う。

3つ上げてみたけれど、SDGsに知ったり、触れて、そこから何を生み出すかはバラバラでも良いと思う。

わかりやすくて、SDGsにはすごい力があるのを感じました。

SDGsの課題と感じている部分はありますか?

田:取り組もうという気持ちがあるのは良いと思うが、そこに課題があると感じている。
SDGsのような考え方や活動を「大事にしよう!」という意識やスローガンみたいなレベルで終わっていて、具体的にゴールに向かっていないケースが多い。
例えば、会社で今年の売上目標は1億円です。というような、経済性は数値のゴールはあるんですが、環境性や社会性に対する数値のゴールの定義がされていない。
本気で取り組むなら、経済性、環境性、社会性の3つが同列で明確であることが大事です。
ただ、現段階では経済性以外の尺度が定まっていないし、実際に取り組んでいるところはまだまだ少ないと感じています。

そうですね。環境性や社会性の指標をどこにおいたらよいかという判断は、難しいですね。

SDGsを具体的に進めるためにはどんなことが必要だと思いますか?

田:すごく大事なことは、SDGsを目的化しないこと。
SDGsはあくまで「目標・手段」にすぎないという点を認識することが大事だと思います。
SDGsという言葉を使わずに、何を伝えたいか。
個人や企業、団体の理念や目的がまず先にあるはずで、SDGsがあるから活動するというケースは少ないと思います。
つまり、SDGsは武器として使うけど、伝えたいことは別にあって、本来の理念を見直すことが大切です。

SDGsを武器として使うことを例えるなら、僕の活動のきっかけである「環境保護の背景には人がいる」に当てはめて考えてみる。
SDGsを取り入れると伝えやすくなったり、話が通じやすくなったり、森林保護団体とパートナーシップを組みやすくなって、国連のバックアップもありますよという感じ。
SDGsが先行するとメッセージが薄くなるので、自分たちが何をつたえたいかをしっかり認識することが大事。
確かに、まず自分の思いとか考えとかがあって、行動することが多いですね。

田:SDGsは2030年までの手段、ツール、ブランド、概念、目標値にすぎない。
「SDGsを達成しよう」というメッセージは、会社でいうと、「とりあえず去年より売り上げを倍増しましょう」という感じ。心が動かされない。なんのための売上倍増なのかよくわからなくなってくる。
開催した勉強会の着地が「SDGsを覚えて帰って下さい」だと、SDGsを目的化してしまっている。SDGsは忘れてもいいけど、伝えたいことを認識して具体的なアクションが起こると嬉しい。

自分も目標を目的と勘違いすることがあるので注意します!
SDGsの活動やワークショップ等様々な活動をされていますが、今後はどういう活動をしていきたのでしょうか?
田:専門領域を持った人同士がつながっていくような、そういう場を創りたい。
そのために、ファシリテーターとしての活動を強めていきます。
ワークショップの参加者が自分のリソースを再発見・再定義できる場をつくれれば、興味のアンテナも変わってくる。

他にも、テクノロジーを使った活動をどんどんしていきたい。
物理的な10〜20人規模のワークショップを行うのはコストがかかりますが、eラーニングであれば、物理的な制約をこえて、学びのプラットフォームができると思っている。
物理的な場とeラーニングの、両方とも存在できる状況ができれば面白い。
そういうテクノロジーをうまく取り入れるワークショップデザイナー、ファシリテーターでありたい。
対面、非対面、両方の価値を再定義し続けるべきだと思っています。

本日はお忙しい中ありがとうございました。
田:こちらこそありがとうございました。

インタビューを終えて

今回、田幡様にインタビューをさせて頂いて感じたことは、伝えたい強い思いがあるから様々な活動に一貫性があって、自分の軸を持った上で物事を見ている視点の高さには、学ぶことだらけでした。
インタビュー前後では、とても気さくでフラットな方なんですが、自分の想いや考えを伝える時は、情熱を持って話をされていて、聞いているこちらも熱くなってきました。
SDGsという世界中が取り組む活動を進めていくためにも、個人や団体として、どんなことを伝えたいのかという軸を持って活動をしていきたいと思います。
田幡様のように世の中を良くしようという強い想いを持って活動する人が少しでも増やしていくために、未来技術推進協会でも活動を進めてまいります。

田幡様の関連企業・団体

株式会社アルヴァスデザイン

elsa

この記事を書いた人
シンラボ編集部
エディター