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【シンラボユース】衛星データで思考を広げるSDGsアイデアソン開催レポート

かみゆー
2020/07/10

みなさん、こんにちは!シンラボユース代表の神山です。

6月27日、シンラボユースとして2回目のワークショップ「衛星データで思考を広げるSDGsアイデアソン」をオンラインで開催しました!

今回のイベントの開催目的は、コロナ禍で学ぶ機会が少なくなっている学生に衛星データの活用について理解を深めてもらい、SDGsの課題解決につながる考え方を養ってもらうことにあります。

そのために初対面の学生同士でもオンラインで活発にアイデアを出し合えるイベントを目指し、社会人メンバーの田中さん、福田さん、奥野さん、恩田さんと共に準備を重ねてきました。

当日は、関東や関西から5名の大学生が参加してくれました。学生同士で活発に議論を行いながら衛星データとテクノロジーを組み合わせた課題解決アイデアをゼロから生み出し、深掘りを行ったアイデアを発表してもらいました。

衛星データに着目する理由

このアイデアソンの企画趣旨として私が衛星データに着目している理由は、「衛星データを用いて自然環境や人々の暮らしの変化を観察することで、課題解決アクションのヒントを得られる」と考えているためです。

衛星データとは地球を周回する人工衛星で取得できるデータを指します。私たちにとって身近な衛星データとしては気象観測衛星から提供される気象情報が挙げられますが、その他にも経済活動や農作物の生育も人工衛星で取得したデータを解析することで観察できます。

例えば下の図は、さくらインターネット株式会社が提供する衛星データプラットフォームTellusを用いて私が取得した農地分布のデータであり、水田地帯を緑色で強調して示しています。植物がもつ特定の吸収波長帯を観測することで栽培作物を識別でき、数年単位で画像を比較することによって、作付作物や耕作放棄地の変化を追うことができます。

このように、衛星データを誰もが手軽に利用できるようになりつつありますが、もちろん衛星データだけでは分からないことや解決できない問題が多いです。

例えば、河川の水位をモニタリングしようとした場合、衛星データではリアルタイムな地点ごとの測定は難しいです。その代わりにIoTの装置を使えば様々な地点でリアルタイムな測定ができるので、水位を自治体などが常に監視することが可能になります。そこに衛星データで過去にどこで氾濫が起こったかという広範囲な情報を組み合わせることで、有効な災害対策を行うことができます。

このようにそれぞれの長所を活かし短所を補いながら、衛星データとテクノロジーを組み合わせることで、SDGsの課題解決に役立つイノベーションを生み出すことができます。

衛星データとテクノロジーで社会課題を解決

本題のアイデアソンでは、衛星データやテクノロジーの活用事例を紹介した後、これらの組み合わせからSDGsの解決アイデアを参加学生に考えてもらいました。

Zoomでコミュニケーションを取りながら、Miroというオンラインホワイトボードツールを活用してアイデアの可視化を行いました。画面上で付箋に文字を書いて移動させることができ、ホワイトボードを皆で囲んでいるような感覚で話し合うことができます。

アイデア出しとアイデアの深掘りの2つのセクションに分けて、アイデアソンを進行させていきました。

前半のアイデア出しのセクションでは、リストからランダムに選ばれた衛星データとテクノロジーのお題を組み合わせて、社会課題解決アイデアを自由に発想してもらいました。

一つのお題につき5分間という短い時間の中で、参加者の皆さんから多種多様なアイデアが生まれました。ブラッシュアップを行って実現させてみたいものばかりです!

後半のセクションでは、前半セクションで発想したアイデアからチームのメンバーで相談して1つ選んでもらい、以下のような項目に沿ってアイデアの深掘りを行ってもらいました。

① SDGs17目標とのつながり、誰を(何を)救えるか
そのアイデアによってSDGsのどの目標の達成につながり、どのような人やモノを救えるか
② 解決アイデアの内容
衛星データやテクノロジーをどのように活用し、どのようなモノやサービスを生み出すか
③ アイデアを実施する手段
そのアイデアのプロジェクトリーダーになったらどのようなプロセスを踏むか、どのような企業や組織とコラボするか

以下では、2つのグループが発表したアイデアを紹介します。

グループ①:ごみを捨てると魚からありがとうと言ってもらえるゴミ箱

グループ①は、海洋プラスチックごみの分布を示す衛星データとVRを活用し、「ごみを捨てると魚からありがとうと言ってもらえるゴミ箱」というアイデアを発表しました。

海洋プラスチックごみは寄り集まって大きな塊となって漂っていることが多く、集合体ならば衛星で観測することができます。

このゴミ箱に取り付けられたVRディスプレイを覗くと、観測した海洋プラスチックごみの分布を示すデータを見ることができます。さらに、ゴミを分別して捨てると魚のアニメーションが流れ、魚に「ありがとう」と言ってもらえます。

このゴミ箱をファストフード店などで設置してもらうことで、親子でごみを分別しようという意識を高めることができます。

グループ②:衛星データで探索した農地に仮想植物工場を立ててみる

グループ②は、農地分布を示す衛星データとVRを活用し、「衛星データで探索した農地に仮想植物工場を立ててみる」というアイデアを発表しました。

植物の生育を観測した衛星データを解析すると、世界中の農地の分布が分かります。それと同時に、島国や砂漠など、どのような地域に農地が少ないか分析することもできます。

そのような農地が少ない地域に植物工場を建設することで、天候や気候に左右されず農産物を栽培でき、飢餓の解決や大規模プランテーションによる森林破壊の抑止につながると思われます。

いざ植物工場を建設しようとすると、立地や工場のデザイン、エネルギーの循環などを検討する必要があります。そこで、VRで仮想的に植物工場を建設することで、低コストで工場の稼働のイメージやエネルギー効率の数値的な検証を行うことができます。

このVR映像を植物工場の建設業者やエネルギー循環に詳しい企業団体、ESG投資家などが視聴することによって、建設に向けた検討プロセスを円滑に進めることができます。

アイデアソンを振り返って

1時間ほどの短い時間の中で参加者の学生さんにここまで具体的な解決アイデアを提案して頂き、アイデアソンの企画者でありながら同世代の学生として驚きました。

また、テクノロジーや社会課題に関心を寄せる学生同士であれば、オンライン上でもすぐに打ち解けて活発な議論を行うことができるという手応えを感じました。

このアイデアソンは今後も継続して実施し、より多くの学生に参加頂いて社会課題や衛星データに関する学習など、何らかのアクションに繋げるきっかけ作りをしていきたいと思います!

そしてこの度、シンラボユースFacebookグループを作成しました!社会課題やテクノロジーに関心を持つ学生に向けて様々な情報発信を行っていきます!

この記事を書いた人
かみゆー
エディター