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GDC報告会に参加して最新のVR/AR情報を得てみた!(前編)

シンラボ編集部
2019/09/16

※本記事は、未来技術推進協会ホームページにて2018年5月18日に掲載されたものです。

みなさん、こんにちは。
中村忍です。

今回の記事では、VR/ARに関する最新情報をお届けしたいと思います。
突然ですが、みなさんはGDCという祭典をご存知でしょうか。GDCとは、「Game Developers Conference」の略で、世界中からゲーム開発者やアーティストなどが集まって、主にゲーム開発の最新技術に関する講義や、試作品の展示が行われる、世界規模のゲーム会議です。


年1回、主にアメリカのサンフランシスコで1週間かけて行われ、2018年度は3月19日~23日まで開催されました。
参加費はいくつかの形態がありますが、全ての会議に参加する場合は、事前予約でも1000ドル程度、また、VRDC(Virtual Reality Developers Conference)というVRに関するセッションも含めて参加する場合は2000ドル程度かかり、渡航費やホテル代も含めると40万円程度の出費になりますので、なかなか手が出せないという方も多いと思われます。

筆者も手が出せなかったのですが、幸運にも、GDCに参加した方々の報告会が4月に行われましたので、その内容を紹介したいと思います。

GDC報告会「行って分かった!欧米のVR/AR最新事情〜GDC・SXSWなどの現地から〜」のパネラー紹介

GDC報告会では、池田輝和氏、久保田瞬氏、諸星一行氏の3人の豪華なパネラーの座談会形式で行われました。
池田輝和氏は、VRの三大巨頭の1つであるOculus社の日本支部を発足し、Oculusのアジアを統括していました。現在はフリーで活躍されています。

久保田瞬氏は、株式会社Moguraの代表取締役社長で、Mogura VRの編集長を務め、VRのジャーナリストをされています。
諸星一行氏は、株式会社メルカリのVR/AR/MR領域の研究開発部門のリサーチエンジニアで、日本バーチャルリアリティ学会認定のVR技術者でもあります。

池田氏によるGDC報告

それでは、池田氏によるGDCの報告内容について、紹介します。

1) VR展示ブース

GDCの会場内には、VR展示会のブースがあり、Facebookの傘下となったOculus、Google、 Amazon、 Microsoftといったプラットフォーマーや、非プラットフォーマーでも、配車アプリサービスを手がけるUberの展示が盛り上がっていたそうです。今年は新作のハードやタイトルがないにも関わらずに大盛況だったそうですが、理由としては、各5社がリクルーティングもかねており、自社のプラットフォーム戦略のビジョンを掲げながら優秀な人材を引き込む目的があるからではという見解を示していました。

2) グローバルイルミネーションの技術デモ

米大手ゲームメーカーのEpic Game社が、ビデオカード最大手のNVIDIA社や 、Lucusfilm社の開発部門のILMxLAB社と共同で作成した、「スターウォーズ 最後のジェダイ」の技術デモを上映しました。

デモは、劇中で使用された「リアルタイムグローバルイルミネーション」と呼ばれるコンピュータグラフィックスによる照明技術を全面に押し出したものです。グローバルイルミネーションは「大域照明」と呼ばれ、光源から「フォトン」という光のエネルギーを放出し、その反射を物理的かつ光学的に表現することで、陰影表現を限りなく現実世界と似せる方法です。

スターウォーズでは、1億フォトンもが使われたそうですが、驚くべきことにその計算をリアルタイムに行ったそうです。秘密としては、NVIDIAの「RTX」というシネマテックレイトレーシング技術と、Microsoftの「DirectX Raytracing(DXR)」にあります。
RTXは、NVIDIA社における10年ものGPUの成果の集大成であり、今まで高負荷のためリアルタイムには表現できなかったグローバルイルミネーション技術をリアルタイムにできるようにまでなりました。

また、その技術をソフトウェアから使用可能としたのがMicrosoftのDXRで、DirectXのバージョン12より使用可能です。これによってリアルタイムな描画が要求されるゲームと映画との差異もなくなるとのことです。
スターウォーズのレンダリングには「Unreal Engine4」と呼ばれる、ゲーム制作者や映像制作者などのプロフェッショナル向けの制作ツールが使われていますが、Unreal Engine4ではこのDXRが搭載されています。

実は、RTX、DXR共に、正式に発表されたのはGDC2018の場であり、このようにGDCは、最新技術の中でも目玉トピックに関する情報を得られる場でもあります。


出展:GDC 2018: EPIC GAMES, NVIDIA, AND ILMXLAB UNVEIL STUNNING STAR WARS REAL-TIME RAY TRACING DEMO

3) VICON社のモーションキャプチャーによるデジタルヒューマン

VICON社というモーションキャプチャー専門の会社によるデモが紹介されました。映画でもゲームでも、人間が演じたモーションをCGのキャラクターにあてて表現するのですが、特に顔の表現は完全に再現することは難しく、目の動き、口の動き、しわなど、現実と微妙な差異があるため、長い間不気味とも思える違和感がありました。

VICON社のモーションキャプチャーは、そのような差異が感じられないほどの高精度なものに仕上がっています。
動画の中の左の赤い服を着た女性は、一見すると本物の人間のようですが、これはデジタルヒューマンと呼ばれ、CGとモーションキャプチャーで作成されたものですから、とても驚きです。


出展:Siren Behind The Scenes | Project Spotlight | Unreal Engine

Oculus Goが一般公開!

PCやスマホ不要で起動する、スタンドアロン型VRヘッドマウントディスプレイ(HMD)「Oculus Go」が、GDC2018の場で初めて一般公開されました。
価格はなんと199ドルと、これまでに比べて非常に安価に入手可能です。

Oculus Riftにみられる既存のVR製品は10万円前後する上に、VRを動かすためのPCが必要で、そのPCもCPUやグラフィックスボードが高性能のものが必要でした。SamsungのGear VRでさえも本体は1万円前後ですが、スマートフォンが必要になるために、トータルで10万円前後になるので、非常に安くVR体験をすることができるようになりました。

Oculus Goは、装置の中にCPU等が内蔵されており、3軸センサーによって首の動きに追従してVR内の映像も切り替わります。ただし、ポジショントラッキングといった、歩行によるVR内の映像の追従には対応していません。
また、ソフトウェア的には、Gear VR対応のアプリやVRコンテンツがOculus Goでもそのまま使えるので、既存の数百~千程度のタイトルが引き継いで遊べることになります。

Oculusの次世代ハイエンドのスタンドアローンVR「Santa Cruz」

Oculus Riftと同等の性能を持つスタンドアローン型のVR「Santa Cruz」Oculusの紹介がありました。これは、4基のカメラを内蔵していて、周囲にある物体を検知するといった特徴があります。GDC2018で発表された内容は、2017年に発表された内容から変化はないようで、2018~2019年の発売を目指して開発中ということです。

まとめ

今回は前編ということで、池田氏の報告内容を元に技術的な内容を加えて紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
講演会に参加していなければ知ることができなかった情報を得られた上に、Facebookなどのプラットフォーマーがリクルーティングも兼ねていたという情報も聞けたのは印象的でした。
次回は久保田氏、諸星氏の報告内容を紹介していきます。

参考

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