未来を創る、テックコミュニティー

たくさんの人の夢を、宇宙で叶えたい!

シンラボ編集部
2019/09/16

※本記事は、未来技術推進協会ホームページにて2018年10月15日に掲載されたものです。

2018年から、宇宙業界が盛り上がりを見せるようになってきました。 民間の宇宙旅行を始め、様々な業界が宇宙へ参入するべく動き出しています。 私達未来技術推進協会では9月9日に「宇宙旅行に何着ていく?」宇宙旅行と宇宙服トーク ショーを開催しました。 遠い未知の世界だと思われていた宇宙が身近に感じるイベントになったのではないでしょうか。

今回、イベントにも登壇いただいた民間宇宙飛行士として活躍されている山崎大地様のインタビューが実現しました!


目次

宇宙ビジネスに取り組まれたきっかけ

宇宙ビジネスに取り組まれたきっかけを教えてください。

アメリカでは宇宙船の開発が進んでおり、その盛り上がりや勢いを生で見たので、僕らもその波に乗ろうと思ったのがきっかけです。 もともと、僕は国際宇宙ステーションで開発と運用の仕事をしていたんですが、2004年に独立してアメリカへ渡った時、アメリカでは、民間企業による宇宙船開発の競争が起こっており、宇宙旅行に関しても日本より話題になっていました。 宇宙旅行がついに始まる時代が来たことを感じ、日本に帰ってからすぐに会社を立ち上げました。

起業後、宇宙旅行を実現させるにはどうしたら良いか考えていた時に星野誠さんに出会いました。 話を聞いたら、星野さんがもうすでに宇宙旅行に予約していると聞いて、やばい!負けている!と思いましたね。 ロサンゼルスで開催された国際宇宙開発会議や宇宙EXPOのようなイベントで大貫美鈴さんとも再会し、アリカの宇宙船開発企業のロケットプレーン社の副社長を紹介してもらいました。そこで工場見学へ行くことが決まり、移動中の飛行機の中で副社長に「宇宙旅行専門の会社をつくりたい」ということと、「僕と星野さんを含め宇宙旅行を申し込んでいる人を会社専属の民間宇宙飛行士として認定してほしい」ということを話し続けました。 その宇宙船はパイロット含め4人乗りの宇宙船なので、1名をパイロット、もう1名を僕たちの中からアテンダントとして搭乗し、日本からお客様を2名ずつ集めるので3フライト分をチャーターさせてほしいと訴え続けました。その熱意が伝わり、ロケットプレーン社の本社についてすぐ契約を結び、宇宙旅行の会社を立ち上げました。

会社を立ち上げるまでのスピードが速いですね。

特にアメリカは何もかもが速いですね。 日本の中にいると、宇宙やロケットなどの情報を見て、最先端のことをやっているように感じると思うんですが、実は日本はかなり遅れているんですよ。アメリカと比べて、30年位遅れています。

そんなに遅れているとは思いませんでした。

技術力というよりも、アメリカは国家予算に依存せず、自立している民間の宇宙企業が多いからだと思います。 たとえば、IT企業のお金持ちの人は自前で宇宙船の会社を立ち上げ、航空宇宙エンジニアを雇って宇宙船開発会社を立ち上げてしまうんですよ。お金は投資やお客様からもらうので、税金などを一切必要とすることはありません。 そんな勢いで会社を立ち上げているのを10年以上前に知ったので、僕たちも自立するべきだと気づきました。

産業が発達していくためには自力が必要なんですね。

そうですね。何よりも大切にすべきなのは一般のお客様です。お客様にサービスを提供する必要があるから、そのお客様が何を求めているのかを考る必要があります。
国の予算や国家事業に飛びついて集まる企業同士で事業を計画しても、お客様を見ていないから、いくら頑張ってサービスを作っても残念ながら売れないんですよ。日本はものづくりの文化が発達していますが、どんなに素晴らしい宇宙船やロケットや人工衛星を作っても、お客様のニーズがわかっていなければ全く売れません。作り手の発想や自己満足ではダメなんです。例えば、すごく高性能な携帯電話を作っても、アプリが全く入っていなかったり、通信会社などのサービスプロバイダーがなかったりしたら売れないのと同じです。お客様がやりたいことに合わせて多様な機能やサービスをつけていくようにする必要があります。日本の宇宙産業では、ものづくりの人を育てる環境はありますが、売る人と買う人を育てる力はまだこれからですね。

必要とする人がいて、初めてサービスが成り立ちますからね。

2005年から民間の宇宙ビジネスの立ち上げに取り組み始めて、2012年からようやく本格的にお客様のために仕事ができるようになってきました。 それまではひたすら実績づくりとマーケットリサーチを続けて来ました。

現在の仕事内容は?

今のお仕事の内容をお聞かせください。無重力飛行などをおこなっていると聞きましたが。

無重力や宇宙でお客様がやりたいことを実現させるのが1つ目の仕事です。僕たちはただ宇宙旅行を販売しているわけではありません。 お客様のニーズを理解して、そのニーズに合うのは無重力飛行が良いのか、あるいはどの宇宙船が一番ニーズに合っているのかを考え、最適なものをマッチングさせて、お客様がやりたいことを準備段階からプロデュースしていきます。

たとえば、宇宙で結婚式を挙げたいというお客様の希望があったとします。 この宇宙ウェディングフライトを実現するためには、ウェディングドレスやジュエリーを無重力対応にする必要があるし、無重力の状態で結婚式ができるように牧師さんや神主さんも訓練する必要があります。 指輪の交換も、指輪が浮いているところで出来たら良いですが、指にあたってどこかへ飛んで行ってしまうと困るので、それをどうやって解決するかも考える必要がありますね。 他にも、宇宙結婚式の様子を記録に残す必要があるので、宇宙で撮影ができる映像・写真カメラマンも同行してもらう必要があります。 さらに、地上でフライト中の様子を生中継するのか、映像編集して披露宴で見せるのか、あるいは、プロジェクトとして1年前からドキュメンタリーで追っていくのか、お客様が宇宙結婚式に合わせて自叙伝も書くのかなどなど、あらゆることを考える必要があります。 そういった宇宙での夢の実現に向けて、お客様と一緒になって準備段階から作っていくのです。

2つ目の仕事は宇宙プラットフォームをつくることです。今まで無重力飛行を活用してお客様の夢を叶えてきたので、それを今度は宇宙船を使っていきます。やがてその先に宇宙ホテルやスペースコロニー、月や火星を使ってもお客様の夢を叶えられるようになります。そのときに、お客様だけだと何もできないので、宇宙でお客様をずっとアテンドできる人材も必要だし、宇宙ホテルが出来たら、何日も何ヶ月も生活できるように衣食住からエンターテイメントまであらゆるものが必要になります。 今後、人間の生活圏が太陽系くらいまで広がっていくと思います。そうなると、地球にあるすべてのものが宇宙で必要になりますよね。そこでASTRAXでは、世界中のお客様が宇宙で何をやりたいかという無数のニーズと、これから続々と生まれてくる宇宙商品や宇宙サービスをマッチングさせる専用のプラットフォームを今つくっているところです。

宇宙事業顧問の仕事について

それ以外にも延べ300社程の顧問をされているという話を伺っていますが、どのようにお仕事をされているんですか?

今は300事業者ですが、最終的に1000事業を目標にして顧問をしています。 飲み会の場などで、軽い感じでこちらで用意した宇宙事業部の辞令フォームを書いてもらい、無料で宇宙事業顧問を引き受けます。

顧問料は無料なので、僕自身はその会社に対して何もアクションは起こしません。でも僕は早ければ2019年にも5回宇宙へ行くことが決まっているので、僕が宇宙へ行くと、その1000社は自分の会社の社員(顧問)が宇宙へ行ったという認識になるので、宇宙を自分事で考えるようになり、立ち上げた宇宙事業部の宇宙商品や宇宙サービスをすぐにアピールしたほうが良いのではと考えるようになるはずです。 例えば映像会社なら、宇宙の映像を作ろうと動き始めるでしょう。

そうなると、例えば世界中で宇宙結婚式をやりたい人や宇宙でCMを撮影したい人が、宇宙の映像を編集してもらいたい会社を検索した瞬間に僕が顧問をやっている宇宙映像事業部を立ち上げている会社が検索でヒットしやすくなるようになります。 つまり、宇宙は興味ないとか難しいとか言って1歩踏み出せないでいるところを、僕が無料で顧問になり、宇宙飛行することで、自動的に宇宙産業に巻き込んじゃうんです。 基本的には顧問契約をした会社に対して何も仕事をしませんが、宇宙事業専用のSNSや宇宙講座などで宇宙に関する最新情報を提供していきます。同業他社の動きも共有することで、我が社ではこんな活動をしようという競争意識が生まれ、そこに新たな宇宙事業コミュニティができていきます。ASTRAXは、そうやって宇宙とは無縁だった企業や事業者に対し、ありとあらゆる方法でこれから一気に活性化していく民間宇宙産業に巻き込んでいくのが仕事なのです。

普段からコンサルティングや顧問の仕事をしているのではなく、2019年の宇宙旅行実現に向けて土台を作っているのですね。

そうですね。僕の仕事はお客様を宇宙へ連れていってお客様の夢を叶えるのが仕事で、その夢を叶えるための活動を様々な技術やサービスで支えてくれるのが、今顧問をしている300社以上の会社なんです。そうやってお客様の希望に応えられるように、たくさんの企業に協力してもらえる体制を作っています。

お客様のニーズに応えるような方法は各社に任せるという感じですか?

そうです。価値付けなどは、それぞれの得意分野を生かして、自分たちで魅力あるものを考えてもらいます。 今はまだ民間宇宙産業の分野はライバルがほとんどいない状況です。だからこそ、必死に競争するのではなく、うまく共存しながら、それぞれが思う存分やりたいことができる。民間宇宙時代の黎明期だからこそできるのです。

まさにチームビルディングですね。

そうなんです。お客様のニーズを叶えるには1社だけでは無理があります。 世界では宇宙船やロケットなどを開発する、あるいは宇宙船の発着場を作るというところは本格的に進んでいるものの、宇宙船で結婚式や葬儀をやりたいとか、CM撮影やコンサートをやりたいという、個人個人のあらゆるニーズに応えられる専門会社はまだ弊社以外に存在しません。

先程結婚式を例に挙げたように、お客様のニーズに応えるためにいろんな分野にまたがって、会社や個人をマッチングできるようなネットワークを持っている宇宙ビジネスのチームもありません。このコミュニティに集まってくる人たちは最先端の宇宙サービスを作っていることになります。さらに、弊社は14年も前から民間宇宙旅行時代を見据えて準備をやり続けて来たので、今や世界一バラエティに富んだお客様のニーズに応えられる企業になってきました。ここ数年で仲間の企業や事業者も大分増えてきて、今はASTRAXに追いつけるような民間宇宙ビジネスコミュニティは世界中探して存在しないと思います。

宇宙の魅力は?

話は変わりまして、山崎さんにとっての宇宙の魅力はなんですか?

新しいものに対してワクワクできることですかね。老若男女問わず、みんなが一緒にワクワクできて、テンションが上がるところが魅力だと思います。例えるなら、規模は違うかもしれないけど、ガラケーを使っていた頃に、突然新しくこの世に発売されたスマートフォンを手にした時のワクワクと一緒かな。宇宙は未開の分野だからこそ、結婚式やコンサートなどで宇宙を利用すれば、宇宙以外のそれぞれの分野で誰もが世界の第一人者になれるチャンスがあります。宇宙は無限の可能性を持っているものすごい大きい存在で、今ならみんながオープンに自由に何をやっても許される場所です。そのような空間だから魅力があるのだと思います。
もう一つ魅力を挙げるなら、宇宙に対して人間は一つになれるというところです。
地上で育ってきた人間にとって、宇宙は過酷な場所でもあります。そこを生活圏にしていくためには様々な分野の人たちの協力が必要不可欠なんです。
映画などでも、宇宙人が攻めてきたり、隕石が地球に落ちてきたりすると、敵国同士だろうがなんだろうが協力するじゃないですか。それが宇宙の良さなんだと思います。

確かに、そういう良さもありますね。 続いて、少しネガティブな質問ですが、宇宙に行くと決めた時に不安はなかったのでしょうか?

不安は全くありません。 小さい頃から宇宙が好きで、手作りの望遠鏡で土星を見て感動して宇宙へ行きたいと思ったのもありますし、機動戦士ガンダムや宇宙戦艦ヤマトも好きでした。 宇宙を目指そうと思ったきっかけは中学1年生の夏にアメリカにホームステイに行ったことです。 アメリカではスペースシャトルや月へ行ったアポロなど、本物の宇宙船が展示されているのをみて衝撃を受けました。 それまで、僕の中で宇宙は機動戦士ガンダムや宇宙戦艦ヤマトだったものが、この国では本当に現実に人が宇宙に行っているというところにギャップを感じました。

その時、アメリカに行くために生まれて初めて飛行機というものにも乗った感動もあり、飛行機も宇宙船にも「とにかくすごい!」ってテンションがあがっていました。
ところが、アメリカから帰ってきた1週間後に日航機墜落事故が発生。そこからさらに半年後にスペースシャトルのチャレンジャー号が爆発してとてもショックを受けました。

そうですね。過去にあったチャレンジャー号の事故はかなりの衝撃でした。

普通だったら飛行機や宇宙船の事故を見たら、宇宙に行くことは危険と思うところだと思うのですが、僕は逆にそれが宇宙を目指すきっかけになりました。これは親の影響が大きいと思います。
僕の父親は東芝の中央研究所で家電の開発をやっていたこともあり、粗大ゴミの日には僕を連れて電化製品を拾ってきては、それを分解して、壊れた部品を組み合わせて新しいものを作り出す、そんな父親でした。
その父の影響を受けたのか、飛行機やスペースシャトルの事故の時、「自分がなんとかしてやろう」と思ったんですよね。自分がもっと安全な飛行機や宇宙船を造らねばという使命感が出てきました。
もう一つ、宇宙を目指すきっかけになったのが高校3年生の頃です。進路相談の面談の時に先生から「卒業したあとはどうするんだ」と聞かれたことがありました。その時、やりたいことがたくさんありすぎて困っていると、先生は「一生やってワクワクする事を選ぶように」と言われ、あれこれ考えた結果、「NASAに行きたい」という答えにたどり着きました。

中1の時にアメリカで見た「宇宙船」にワクワクしたんです。 それで先生に「NASAに行きます」と言ったら、なんと先生には「馬鹿か、うちの高校からNASAは絶対無理だ。考え直せ」と言われてしまいました。 その時は結局「家電のデザイナーになります」と言って話がまとまったのですが、NASAは無理だと言われたことがすごく悔しくて。そして「絶対にNASAに行ってやる」と決めて猛勉強した結果、当時日本に3校しかなかった航空宇宙工学を学べる大学に入学することが出来ました。大学を卒業し、僕は国際宇宙ステーションを開発し運用する会社に就職。国際宇宙ステーションの運用管制官という仕事に従事し、国際宇宙ステーションを建設するための日本代表の1人に選ばれて、テキサス州にあるジョンソン宇宙センターというところで仕事をすることになりました。夢に見ていたNASAで働くことが出来たのです。

スペースシャトルの事故や先生に言われたことは、普通の人ならネガティブになってしまうかもしれません。そこを、発想を変えて自分の闘志を燃やす糧にしたところは素敵ですね。

そうですね。スペースシャトルの事故があったおかげで使命感が湧いたし、先生が言ってくれたから反骨精神でがんばれました。そういう意味では僕の人生にとっては、この二つの出来事は非常に大きなことでした。

宇宙が社会課題にどのように貢献しますか?

私達未来技術推進協会は技術を使って社会課題を解決していくというのをビジョンに掲げています。そこで宇宙ビジネスが今の社会課題にどのように貢献するか、お考えを聞かせください。

宇宙というのは逆にいろんな社会課題を解決できるので、一概にこれというのは難しいですね。
一番大きいのは、一般人が宇宙に普通に行けるようになると、世界が平和になるというところです。
今は、国ごとに国境があります。国境があると領地の取り合いや利権のぶつかり合いで戦争が起きますよね。
みんなが宇宙へ行けるようになると、地球が一つの国のようになります。そうなると、みん
な同じ地球に住んでいる家族、あるいは仲間だという意識に変わってくるでしょう。
というのも、現在SpaceX社が開発している宇宙船は、もちろん宇宙へ行くためのツールでもあるのですが、同時に地球上の交通手段の一つとしても使われるようになる予定です。日本からアメリカへ移動する時、宇宙船を使って宇宙空間を通っていくと、なんと30分くらいで行けるようになります。 世界中、30分で移動ができる。そんな時代がもうすぐやってこようとしているのです。

そうなると、例えばニューヨークに赴任とかロンドンへ留学となっても、家から通えるようになるんですよ。 地球上の人たちは好きなところで生活ができるようになるので、国籍や人種が入り乱れて、地球全体が多国籍国家のようになります。そうなると、飢餓があったり、病気で亡くなったりするというような社会問題が他人事ではなく自分事になりますよね。 伝染病がアフリカで流行ったとして、今は日本にいるから関係ないやと思う人もいるかも知れませんが、30分で移動できるようになれば、いつ伝染病が日本にもやってくるかわからなくなります。あるいは外国の友達が病気になれば、今よりももっとなんとかしてあげたいと思うようになるでしょう。そうなると、外国の問題も自分ごととして解決しようと、みんなもっと本気で動くようになると思うんです。人間が宇宙に飛び出して地球を振り返ればそこに1つの地球しかない。あるいは大陸間の移動がたった30分という距離感になれば、世界中の社会問題の解決のスピードはもっと速くなる。そういったことができるようになるのが宇宙なんだと思います。

そうですね。まず、いかに自分事にするかが社会課題解決のヒントだと協会でも考えています。

宇宙はそれ以外にもいろんな問題を一度に解決できる可能性を秘めています。
まず、移動時間が30分になれば入国審査やパスポートがなくなるでしょう。いちいち30分ごとにやっていたらきりがないですからね。お金も、暗号通貨のような地球や宇宙でも使える共通通貨があれば、いちいち換金する必要もなくなるし、火星とか月でコーヒーを飲んだときに、それはドルなのか、元なのかを考える必要もなくります。太陽系全部が一つの暗号通貨で生活できるようになればとても便利ですよね。 敵国だと思っていたところに自国民がいっぱいいるようになれば、戦争もできなくなります。だから地球上はどんどん平和で安全な星になって行くんです。今後は、国家予算で動いている人たちはとても大変な時代になるでしょうね。世界中の個人個人がもっと現実的につながる時代になって行くのですから。そして地球上にあるすべてのものが、それぞれ一番便利なものに統一されていくでしょう。そうやって地球が一つにまとまって行く時代がもうすぐやってくるのです。

そうなったら本当に平和な世界ですね。

そうですね。競争することによって、より良くなることはありますが、命をかけて戦わなくても良くなると思います。僕はこれからは戦争もスポーツのような、健全な競争になるんじゃないかと考えています。殺し合いなどの負のエネルギーを、助け合いなどの正のエネルギーに変えられるのが宇宙なんだと思います。

若手技術者に期待することはなんですか?

私達協会のメンバーや会員のメンバーは20~30代の若手のエンジニア中心の団体です。若手の技術者に期待することがあればメッセージをお願いします。

その技術を本当に必要としている人がいるかどうか、ということを大切にすると良いと思います。まず、技術の開発も大事ですが、社会や個人のニーズをきちんと捉えているかと、マーケットのニーズをしっかり見ているかが重要です。
僕はもともと航空宇宙工学から日本の宇宙業界入って、国際宇宙ステーションの開発をやっていました。その時は気づかなかったんですが、その仕事をやめた後に気が付いたんです。どんなに最先端で優れた技術でも、一般の人たちのためになっていなければ単なる自己満足でしかなくて意味がないということに。
みんな、素晴らしい宇宙船やロケットや人工衛星を作れば、そこから新しい需要が生まれて、きっと売れるようになる、と考えるかもしれません。しかし、そこに欲しいと思っているお客様いなければ全く売れないんです。しかし、無駄なものを作ったと言われたくないので無理やりお客様を作らなければならなくなる。そうやってどんどん無駄なものが増えて行き、悪循環から抜け出せなくなるんです。そして、その中にいると自分ではその無駄に気づけなくなるんです。そんな遠回りなことをやっていたら、他の国と競争した時に日本は完全に負けてしまいます。だから、まず周りに本当にその技術やサービスを必要としている人がいるかどうかを考えるべき。作り手の理論ではダメなんです。買い手や使い手の理論を理解する必要があるんです。そして、作り手(技術者)と買い手や使い手(お客様)の間に入るサービスプロバイダーがいると、うまくお客様のニーズに合わせて適切な技術やサービスを振り分けてくれるので、お互いがwin-winの関係になります。だから、自分の作った技術を広めようとしている人は、自分の技術を売ってくれる人と仲良くなったほうが良いと思います。そして自分は作ることに集中する。しっかりとその役割分担ができないと、技術を進化させて行くのは難しくなってしまいます。飛行機や電車を作っている会社の人が、旅行のチケットを売らないのと同じです。

お客様にうまく自分たちのことを見せてくれる人と手を組んで、お客様からもらったた ニーズに合わせて技術をつくるほうが良いということですね。

どうしてもすごい技術作った人は「俺の技術すごいでしょう」って言いたくなっちゃうものです。でも、技術を売ることは、ニーズがよくわかっているサービスプロバイダーに任せたほうが、開発者や技術者はもっと開発に専念できるようになりますし、先にニーズを作っておけば、それに応えるものを作れば必ず売れるのですから。お客様を大事にするのはもちろん、間に入って、お客様のニーズに合わせてカスタマイズする人も大事にしてほしいと思います。

そうですね。 たくさんの熱い想いを聞かせていただき、ありがとうございました。

インタビューを終えて

山崎さんのインタビューはより宇宙の可能性を感じる時間となりました。
人生の一大イベントだと思っていた海外旅行の認識も宇宙を活用すればもっと身近に感じますね。
他にも宇宙では結婚式やコンサートなど地球上でできることすべてが実現可能であることも教えていただきました。
今までできないと思って無意識に蓋をしていた、皆さんの夢をもう一度見直してみてはいかがでしょうか?
叶わないと思って諦めていた夢が現実になる日も近いかもしれません。

この記事を書いた人
シンラボ編集部
エディター