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大気に国境はない。気象災害対策の国際連携【前編】

かみゆー
2021/07/29

こんにちは、シンラボ学生メンバーのかみゆーです。

夏本番を迎え全国各地で連日猛暑日となっている今日この頃、夏バテ気味の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

暑さに加えてこの時期に懸念されるのが、集中豪雨や台風といった風水害です。先日熱海市で発生した大規模な土石流は、梅雨前線に加えて短時間に豪雨をもたらす線状降水帯の形成が要因となったと言われています。

近年この時期に大きな災害を引き起こしている線状降水帯の発生には、地球温暖化が関係していると専門家が指摘しています。[1]

国内だけでなく先月カナダで発した熱波、先日ドイツ・ベルギーで発生した洪水災害など世界各地で記録的な災害が発生しており、地球温暖化との関係性について調査が行われています。

地球温暖化よって規模が大きくなっている自然の脅威から人々の生活を守るためには、災害の兆候を捉えて迅速に共有する国同士の連携が欠かせません。

今回は、気象災害対策の国際連携というテーマで、2回にわたって調べたことと私の考えを綴っていきます。

前編の本記事では、地球温暖化が進むと2100年の天気はどうなるか、また、SDGsと気象の関わりについて考えていきます。

地球温暖化が進むと日々の天気はどうなるか

気象庁は「2100年 未来の天気予報」と題して、気候変動対策によって気温上昇が抑えられた未来とそうではない未来を比較して、地球温暖化対策の重要性を訴える動画を公開しています。

この動画では、パリ協定で定められた「産業革命以前からの気温上昇を1.5℃に抑える」という努力目標を達成できなかった2100年における天気予報の様子を見ることができます。

まず興味深いのは、札幌でも40度を超える日があることです。那覇で観測されている最高気温が38.5度であるのに対して、北海道から九州では40度を超える気温が観測されています。

動画の中では、猛暑によって北海道における米の生産が大きなダメージを受けていることも報じられています。

南国の島々だけでなく、北海道など高緯度地域では、より深刻な気候変動の影響を受けることが予見させられます。

出典:環境省ホームページ (http://www.env.go.jp/press/107008.html)

SDGsの達成に向けた気象情報の役割

言うまでもなく気象現象は私たちの生活と密接に関わっています。

SDGsでは、途上国地域の生活水準向上や都市の経済活動の持続など、複数のターゲットで気象災害に対するレジリエンスを高めていくことの必要性が定められています。

目標1 貧困をなくそう

ターゲット1.5: 2030 年までに、貧困層や状況の変化の影響を受けやすい人々のレジリエンスを高め、極端な気候現象やその他の経済、社会、環境的な打撃や災難に見舞われたり被害を受けたりする危険度を小さくする。

目標2 飢餓をゼロに

ターゲット2.4: 2030 年までに、 持続可能な食料生産システムを確立し、レジリエントな農業を実践する。そのような農業は、生産性の向上や生産量の増大、生態系の維持につながり、気候変動や異常気象、干ばつ、洪水やその他の災害への適応能力を向上させ、着実に土地と土壌の質を改善する。

目標11 住み続けられるまちづくりを

ターゲット11.5: 2030 年までに、貧困層や弱い立場にある人々の保護に焦点を当てながら、水関連災害を含め、災害による死者や被災者の数を大きく減らし、世界の GDP 比における直接的経済損失を大幅に縮小する。

目標13 気候変動に具体的な対策を

ターゲット13.1: すべての国々で、気候関連の災害や自然災害に対するレジリエンスと適応力を強化する。

(出典)「SDGs とターゲット新訳」制作委員会, SDGs とターゲット新訳

気候変動によって特に被害を被るのは、生活インフラが整備されていない地域に住む人々です。

気候変動そのものを止めなければならないことはもちろんですが、気候変動によって生活を変えざるを得ない人たち、気象災害の危機にある人たちを救うことも同時に、全世界で一丸となって取り組まなければならないことであると考えています。

SDGsでは「誰一人取り残さない」という理念が掲げられていますが、どのような立場の人々に対しても的確かつ迅速に気象情報を伝えられるよう、気象観測インフラや気象情報配信サービスの整備が求められます。

いざという時に命を守る行動を促す気象サービスが担う役割は、今後より一層大きくなっていきそうです。また、気象現象について正しい知識をもって災害の兆候が見られる際に迅速に行動できるよう、気象学や地域防災の普及・教育活動も重要になると考えます。

大気に国境はない

地球を取り巻いている大気に国境はありません。大気は熱や水蒸気の移動を伴って循環しているため、地球規模の気温や降水量の分布に大きな影響を及ぼします。[2]

例えば数年おきに発生するエルニーニョ現象は、太平洋赤道域の海面水温が平年より高くなることで、日本に冷夏や暖冬をもたらします。逆に、太平洋赤道域で海面水温が平年より低い状態が続く現象はラニーニャ現象と呼ばれ、日本の夏は例年より暑く、冬は例年より寒くなります。[3][4]

出典:気象庁ホームページ(https://www.data.jma.go.jp/cpd/data/elnino/learning/faq/whatiselnino.html)

この事例のように、遠く離れた場所の大気や海洋の変動が数年や数十年といった単位の異常気象や気象災害をもたらすことがあるのです。

地球上のあらゆる地点で大気の変動を観測し、その情報を世界中で共有することができれば、異常気象や気象災害に備える時間を稼ぐことができます。

だからこそ気象観測インフラや気象サービスについて全世界で底上げを図り、いつでも、どこでも気象情報を送受信できる環境が整えられることが重要になると考えます。

次回予告とお知らせ

ここまでは地球温暖化が進むことによる異常気象や気象災害に対して、世界が連携して備えに万全を期すことの大切さについて触れてきました。

後編の記事では、世界中の人々を気象災害から救うため、国連や各国政府機関などが連携して取り組んでいるプロジェクトについて紹介します。

さらに私たち個人も世界中に気象情報を発信できるサービスを紹介し、私たちにできることについて考えてみます。

最後に私が企画に携わっているイベントの宣伝となりますが、8月21日(土)に「衛星データで気候変動問題に挑む!オンラインアイデアソン」を開催します!

気候変動問題に関心があり「自分も何か行動したい!」という想いを持った方とつながり、アクションを起こすキッカケを掴むことができます!

イベント申し込みはこちら

<参考資料>

[1] 中北 英一, 梅雨豪雨と地球温暖化, https://www.n-bouka.or.jp/local/pdf/2019_06_04.pdf, アクセス日2021/7/18

[2] 国立環境研究所, 大気と水の循環, https://tenbou.nies.go.jp/learning/note/theme1_3.html, アクセス日2021/7/20

[3] 気象庁, エルニーニョ/ラニーニャ現象とは, https://www.data.jma.go.jp/cpd/data/elnino/learning/faq/whatiselnino.html, アクセス日2021/7/20

[4] お天気.com, エルニーニョ現象、ラニーニャ現象とは?日本への影響は, https://hp.otenki.com/4496/, アクセス日2021/7/28

 

この記事を書いた人
かみゆー
エディター