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宇都宮に国内70年ぶりに新しい路面電車が開通

KURO
2021/06/09

路面電車

路面電車と聞くと、どこか懐かしい街をゆっくり走る乗り物だと思いがちですが、2023年3月に開業予定の芳賀・宇都宮LRT、愛称「ライトライン」は、最新設備持った未来の乗り物です。他の都市でも、同じような路面電車建設の話は盛り上がっており、『ライトライン』開業でこれからの動向が注目されます。

宇都宮LRT(ライトライン)
芳賀・宇都宮LRT公式ページより
2022年開業予定だったが、1年延びて2023年開業予定
https://u-movenext.net/

今、なぜ路面電車が建設されるのか?

新しい都市で路面電車が走り出すのは、1948年、富山県高岡市に、現在万葉線として走っている路線が最後で、これ以来、路面電車の延伸はあっても、新たに導入する都市はありませんでした。

高度経済成長期、路面電車は増える車の行手を阻む邪魔者として、あるいは大量輸送のため地下鉄に役割を交代し、徐々に姿を消して行きます。東京では今の地下鉄に匹敵するくらいのたくさんの路線が、1960年くらいまで走っていましたが、現在は都電荒川線と、東急世田谷線の2路線のみになりました。

再び路面電車に注目されるようになるのは、1997年、熊本で低床車両が走り出してからです。それまでの路面電車は、床に機器を設置する関係で、ホームと大きな段差が生まれていました。それに対してヨーロッパでは、当時の最新技術で車両に搭載する機器を小さくすることで、床の低い車両の開発に成功。これを日本に輸入し、最初に走り出したのが熊本市電です。

この頃から、バリアフリー問題が注目を集めるようになりました。高齢化や障がい者などに配慮する機運が高まり、階段の登り下りは大変なので、エスカレーターやエレベーターを設置する動きが生まれてきました。一方で、そもそも道路と並行して走る路面電車は、むしろバリアフリーなのではないか、という話になってきたのです。

この技術の進歩と、社会的な価値観の変化で、路面電車に注目が集まるようになりました。さらに、広島電鉄ではドイツから大量の低床新型車両を導入したこともあって、ライトレールやLRTという呼称で、路面電車のイメージが新しくなっていきます。

JRのローカル線を蘇らせた路面電車

そして2006年。さらに画期的なことが起こります。

なんと、JRのローカル線を路面電車に転換してしまったのです。現在の富山ライトレール、JR時代は富山港線と呼ばれてました。中心の富山駅近くの鉄道路線を、道路を走る路面電車に切り替え、最新式の低床車両を導入。全く新しい路線へと生まれ変わり、収支もも黒字に転化。2020年には、市内の別の路面電車と相互直通運転を始め、新しい路面電車のモデルになりました。

同時に、技術面でも国内で開発が進んでいき、広島で純国産の新型車両が2004年に導入されています。

富山ライトレール
富山ライトレール
日本中に次世代路面電車(LRT)の真価を見せつけた

路面電車は地方創生につながるか

宇都宮では、長らく路面電車の導入の議論がなされていました。理由は、車社会で高齢化が進んでいるので、運転しなくても住みやすい街を作ろうと。当時の宇都宮市長選で、路面電車建設を公約に掲げた方が当選したことで、一気に現実味を浴びてきました。

個人的には、路面電車はあくまで手段です。そして税金を使うにしても、大幅な赤字は許されません。街の活性化に繋がるかも一概には言えません。ただコンパクトで誰にでも優しい都市にしていくなら、検討の余地はあると思います。

大事なのは、どのような都市にしたいのか。ビジョンを掲げ、住民と向き合い、戦略と戦術を磨けあげて行けば、素晴らしい乗り物になると思います。

この記事を書いた人
KURO
エディター