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『BIGの終焉 個がつながる社会へ』開催レポート

睦月
2021/03/02
BIGの終焉 個がつながる社会へ 【オンライン講演会】 講師:金田 信一郎 様 (作家・ジャーナリスト)

『BIGの終焉 個がつながる社会へ』開催レポート

2月19日に行われました、未来技術推進協会主催の講演会『BIGの終焉 個がつながる社会へ』の開催レポートです。

講師には作家・ジャーナリストとしてご活躍中の金田信一郎様をお招きし、巨大組織の栄光の歴史とこれからの姿をテーマにご講演頂きました。

金田信一郎(かねだ・しんいちろう)
作家・ジャーナリスト。1967年東京都生まれ。日経ビジネス記者・ニューヨーク特派員、日本経済新聞編集委員などを経て2019年に独立、「Voice of Souls」を創刊し、巨大組織の終焉と個人中心の社会を描き続ける。
著書に『つなぐ時計 吉祥寺に生まれたメーカーKnotの軌跡』(新潮社、2020年)、『失敗の研究 巨大組織が崩れるとき』(日本経済新聞出版社、2016年)、『テレビはなぜ、つまらなくなったのか スターで綴るメディア興亡史』(日経BP社、2006年)など。
Official site:https://shinichiro-kaneda.com/

講演の冒頭は、講師の著書である『失敗の研究 巨大組織が崩れるとき』の内容も織り交ぜながら、大企業がなぜ失敗を繰り返すのか?からスタートしました。

人口減少が進む日本で、株式会社という利益を生み出し続けなければならない組織がいかに困難なのか。株主に常に監視され、会社で出された利益がCEOから株主に流れていく仕組みの上で、組織のトップだけで数字が行き来する様な経営では、企業が成長し続けることは難しいです。
現場の意見が反映されないコストカットが評価され、組織としての成長、生み出すサービスの成長がなされていない。この株式会社という仕組みから生まれた20世紀の大企業に未来はあるのでしょうか。
また、組織内外の繋がり不足も大きな課題です。企業と取引先、企業と地域とのつながり、現場とトップ層でのつながりが希薄になり、情報連携がされていないことから事前に止められはずの不祥事を何度も繰り返してしまう。今こそ、日本がこれまで積み上げてきた大企業像をもう一度見直すべきです。

多くの企業や組織を取材を通して見てきた金田様のお話に、日本企業の経営不振や会社員の低賃金化など、これからの日本での働き方、会社組織の在り方を考えさせられました。
では、日本企業が目指すべきところはどこなのでしょうか?

ポストイットで有名な、3Mという世界的化学・電気素材メーカーには『15%ルール』という慣習があります。これは、勤務時間の15%を自分自身のプロジェクトに使うことを奨励するというもので、ポストイットもこの文化から生まれたことで知られています。
企業として従業員のアイデアを大切にし、仕組みでサポートする。3Mの経営トップも10年後この会社が何をしているかわからないと話すほど、イノベーションが生まれ続けている組織です。また、会社終わりにはホームパーティを開き従業員同士がコミュニケーションをとるなど、かつて日本企業が大事にしていたことを今も続けている企業です。
従業員数約9万人。世界約200か国で営業し、顧客や社員地域のことを考え彼らを満足させる生態系の様な3Mという巨大組織。62年連続で増配し続けているイノベーション企業から学ぶべきことがあるのではないでしょうか。

他にも、地域との関わりを大切にしている日本の鉄道会社『小湊鐵道』や、東日本大震災が起きた直後から今も行われている三菱商事のボランティア活動などを紹介頂き、企業と地域とが共に生き、成長していく姿を知ることが出来ました。

最後に金田様は、「これからの日本が成長していく上で、個としてどんな強味を持っているのか。自由な時間を与えられたときに何をするのか。ギグエコノミー的な社会でも通用する個の強さを磨き続ける必要がある。そしてその先で仲間と共に、地域と共に成長していくことがこれからの日本に必要なことではないか?」と話されていました。

会社員としての働き方も、個人のつながり方も企業の在り方も急速に変化していく現代で、個として組織として成長していくためには何が必要なのか考えさせられる時間となりました。

予定していた時間もオーバーし、用意していた原稿の3分の1も話せなかったとのことで早くも第2回の開催を計画しております!
次回開催時にはぜひご参加頂ければと思います。

 

この記事を書いた人
睦月
エディター