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広がる可能性!量子コンピュータができること

シンラボ編集部
2019/09/16

※本記事は、未来技術推進協会ホームページにて2018年9月5日に掲載されたものです。

みなさん、こんにちは。鈴木彩です。
未来技術推進協会では、社会課題を解決する技術に注目しており、その中で以前量子コンピュータを取り上げた記事を掲載しました。

今回はこの量子コンピュータを使うと何ができるようになるのかを、紹介いたします。


量子コンピュータとは?

1990年代からその名を聞くようになった量子コンピュータは、従来のコンピュータよりも高速であると期待されています。
その理由は、従来のコンピュータが「1」と「0」のどちらかを組み合わせて計算しているのに対し、量子コンピュータは「量子の重ね合わせ」といった量子力学特有のふるまいによって、「1」と「0」の両方の状態を同時に持ちながら計算できるためです。
「組み合わせ最適化問題」に強いことが特徴で、量子コンピュータが得意とする形に処理を定式化することによって計算時間が劇的に高速化され、様々な分野で技術が発展すると予測されています。

「組み合わせ最適化問題」という言葉が聞き慣れない方も多くいるかと思いますが、簡単にいうと、多数ある選択肢の中から最適な答えを選ぶ問題です。
一例として営業マンが最短のルートで街中を移動できる経路を算出するといった事例があります。
カーナビに応用すれば、渋滞を回避できるルートを瞬時に計算することができるようになるかもしれません。
量子コンピュータが使えるのはこれだけ?と思った方もいらっしゃるでしょうか。
実は世の中にはこの「組み合わせ最適化問題」は多くあります。

では、私たちの周りにある事象で、量子コンピュータを用いて解く組み合わせ最適化問題を例について、紹介していきます。

量子コンピュータ×創薬=多くの人が健康に!?

新薬の開発の方法のひとつに分子の部分的特徴を抽出して検索する「分子類似性検索」があります。
医薬品の構造と私達の体は鍵と鍵穴の関係にあります。医薬品の構造(鍵)と、私達の体の構造(鍵穴)が合致すれば、医薬品が効果を発揮し、体で起こっている病気や疾患の症状を改善させる事ができきます。

ただし、この鍵穴に一致するような新薬候補は膨大にあり、従来のコンピューターで検索するのにかなりの時間を要します。量子コンピュータを用いた分子類似性検索を行えば、新薬候補となる化合物を高精度かつ、瞬時に見つけることができるようになります。

現在新薬の開発には約10年かかると言われていますが、量子コンピュータを活用すれば新薬開発のスピードも向上するでしょう。HIVや末期がん、様々な難病に苦しむ多くの方が救われ、病気が完治あるいは寛解(かんかい※)して、QOL(生活の質)が向上する可能性がありますね。

※寛解(かんかい):病気の症状が一時的に軽くなったり、消失している状態のこと。病気・疾患そのものは完治しておらず、このまま再発する可能性もあれば治る可能性もある。

量子コンピュータ×AI=シンギュラリティ(技術的特異点)が早まる!?

今、注目されてるのが、AIの機械学習を量子コンピュータで行うというものです。
機械学習には「組み合わせ最適化問題」を含んでおり、学習させた要素のうち、どの要素が重要なものなのか、あるいは不要なものなのか判別したり、学習したデータをグループ分けする問題などがあります。
もちろん機械学習のすべてが「組み合わせ最適化問題」であるとは限りません。しかし、量子コンピュータを応用すれば、AIの機械学習の精度は飛躍的に向上するでしょう。

囲碁の世界においてAIが人間に勝ったり、医療の世界においては人間より正確に画像診断を下す事例が増えており、すでにAIが人間を超える分野が出てきました。
シンギュラリティを「AIが人間を超越するポイント」と定義するのであれば、もうすでにシンギュラリティは始まっています。
量子コンピュータとAIはエクスポネンシャル(指数関数的)に発展する技術と言われており、この両者を掛け合わせれば、今後ますます技術の発展は著しいものになっていくでしょう。

わたしたち未来技術推進協会では、AI・IoT・ドローンを含むエクスポネンシャルテクノロジーだけでなく、社会課題の解決をテーマとしたSDGs(持続可能な開発目標)への具体的なアプローチを模索するために著名な方を招いての講演会やアイデアソン、ハッカソンなどのイベントを通じ、これからの未来に向けてどのように取り組むべきか考えています。
まずはイベントに参加して、協会の活動に触れてみてはいかがでしょうか。


参考

この記事を書いた人
シンラボ編集部
エディター