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大気に国境はない。気象災害対策の国際連携【後編】

かみゆー
2021/09/19

こんにちは、シンラボ学生メンバーのかみゆーです。

東京オリンピック・パラリンピックや甲子園の熱戦が終わると共に、涼しい日が増え秋を感じる時も多くなってきました。

オリパラや甲子園を振り返ると、雨天により甲子園の試合が延期となる日が続いたり、オリンピックのテニス競技では危険な暑さに対する選手からの抗議によって試合時間が変更されたりと、天候が選手のパフォーマンスに大きな影響を与えました。

日々の天気は私たちの生活にも密接に関わっていますが、地球温暖化よって規模が大きくなっている豪雨や台風などの自然災害は世界中で大きな脅威となっています。そこで今回は、気象災害に立ち向かうための国際連携の取り組みについて紹介していきます。

2回にわたる記事の前編では、地球温暖化が進むと2100年の天気はどうなるか、また、SDGsと気象の関わりについて述べてきました。

後編の本記事では、異常気象への対策として、気象に関する情報や知識を各国で共有する国際連携の取り組みを紹介します。

気象、防災教育の普及

気象に関するサービスや教育が行き届いていない地域において支援を行っていくことは、気候変動や気象災害から市民生活を守るために大きな助けとなると考えます。

世界気象機関(WMO)は、発展途上国の安定的な農業や食糧生産及び災害リスクの軽減を目的として、途上国地域における気象学の研究教育活動の援助を行っています。

その一例として、マラウイ共和国とタンザニア連合共和国では、市民の健康増進と災害リスク軽減を図るべく、気象情報サービスの提供と利用の強化をアウトカムに掲げ、WMOと現地の気象局が連携して教育プログラムが進められています。

このような教育プログラムが継続的に実施されることで、現地の気象観測インフラや気象情報サービスの発展につながることが期待できます。

地球上のあらゆる地点で大気の変動を観測し、その情報を世界中で共有することができれば、異常気象や気象災害に備える時間を増やすことができるのではないかと考えます。

出典: 世界気象機関 Adaptation Programme in Africa (GFCS APA) Phase II: Building Resilience in Disaster Risk Management, Food Security and Health

気象災害の予測技術向上に向けて

地球温暖化によって大気の循環や海面水温の変化が進行していくと、これまで経験したことのない気象現象に見舞われるリスクが高まっていきます。

気象予測は、リアルタイムな観測と過去の気象データの組み合わせによって行われるため、過去に同じような事例がなく、短時間で状況が変化する気象現象を予測することは大きな困難が伴います。

例えば、近年国内で大きな気象災害をもたらしている線状降水帯は、数時間で積乱雲が急速に発達することで発生するため、予測が難しいとされています。

このような予測が難しい気象災害に立ち向かうため、気象観測データや気象予測技術を共有しあう国際連携の動きが加速しています。

国際協力プロジェクトセンチネルアジアは、宇宙技術によるアジア太平洋地域の災害管理への貢献を目的として立ち上げられ、地球観測衛星画像などの災害関連情報をインターネット上で共有し、自然災害による被害を軽減する取り組みを行っています。

このプロジェクトでは、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが運用する地球観測衛星を用いてアジア太平洋地域で発生した自然災害の緊急観測を行い、被害状況の迅速な把握や復旧・復興に貢献しています。

また、過去に記録した災害をもとに、ハザードマップ作成や防災訓練、早期警戒システムの構築などにも取り組んでいるようです。

衛星画像などから過去の気象データを蓄積し気象災害の予測精度を高めていくことによって、住民の的確かつ素早い避難行動をサポートする情報発信が行えるようになると期待されます。

2021年6月3日スリランカ洪水災害のレポート(Provided by JAXA)

あなたも世界に気象情報を発信できる?!

気象予報業務を行えるのは気象予報士の資格を持った人に限られていますが、私たちも今いる場所の天気を発信することで、気象情報発信のお手伝いをすることができます。

ウェザーニューズ社がTwitter Japanと協力して展開しているサービス「#減災リポート」では、リアルタイムに災害の発生状況を発信、取集することができます。

自然災害によって発生した被害状況をウェザーニュース会員やTwitterの利用者の方々から報告いただき、それをウェブサイトでリアルタイムに広く公開することによって、個人・地域の被害を軽減させる活動や防災活動を推進していく参加型のプロジェクトです。(ウェザーニューズ社ホームページより引用)

Twitterという強力な情報発信ツールを活用すれば、少ないタイムラグで多くの人々に避難行動を呼びかけることができます。

デマ情報の拡散という解決しなければならない課題はありますが、ウェザーニューズ社の「#減災リポート」のようにツイートされた時刻や位置情報に基づいて有益な情報として公開される仕組みがあれば、災害発生状況の正確な把握に活用できそうです。

おわりに

今回の記事では、気象災害対策の国際連携の取り組みについて触れてきました。

気象、防災の教育と同時に気象情報を観測、発信するインフラが整えられれば、世界中の人々が、より主体的に気象災害への備えを行えるようになると考えます。

離れた国で起きた気象災害に対しても関心を寄せて痛みを分かち合い、自分の街の備えは大丈夫かと問いかけることが大事になります。

私も国内外の気象に関するニュースに目を向けながら、気象災害への備えとして自分にできることを考えていきたいと思います。

この記事を書いた人
かみゆー
エディター