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SDGsボードゲーム制作秘話・第5弾 地道な努力から世界に羽ばたくSDGsボードゲーム

井上
2020/06/28

今回は、未来技術推進協会(以下、協会)オリジナルのSDGsボードゲーム「Sustainable World BOARDGAME」全体統括者の1人である山田さんへのインタビュー記事となります。
インタビューは加藤、ライターは井上でお送りします!

ボードゲーム展開に向けて支援いただける各団体・担当者とのアポ取りや打ち合わせ、一般社団法人Japan Innovation Network (以下、JIN)との出会いのきっかけや関係づくりについて伺います。幅広いエピソードを交えて、ゲームがどのようにして世界に広がりを見せる段階まできたのか、その秘めたる想いや今後の展望について熱く語っていただきました。

ーボードゲーム制作にあたり、当初はどのような目標を掲げて活動範囲を広げていかれたのでしょうか?

作ったきっかけですよね。ぶっちゃけて言うとノリなんですよ(笑)
未来技術推進協会はまず若手のエンジニアが集まって何かやろうとしていたが、具体的に見せられるもの、武器となるものが最初ありませんでした。
指標の1つとして社会課題に取り組むことを挙げていたところから、たまたまSDGsという言葉を知りました。どうやら別のボードゲームが既にあると知って、俺らにも作れるんじゃないか、と。

ー本当にまさにノリなんですね(笑)
ただ、ノリで実際に作れるところがすごいなと思うんですが、実際に作ってみて誰も知らない状態から広めて行くのが大事ですよね。

コンテンツを作ったら、ひとまずとにかく広めよう!と動きました。
プレスリリースは当初から打っていて、イベントは好きだったのでミートアップなどでボードゲームを使った体験会など手探りで開催し、認知を広げることをやってみると意外と人が集まりました。
うまく行った話も多いですが、実は企業に対して1000社以上メールを送っていたものの、ほとんど反応なしでした。そうして地道にいろいろやっていく中で、イベントをやるのが効果的だな、と。月に1,2回ワークショップを小規模でやるなど、最初は近いところからやっていきました。

ーすごいですね、1000社にメールを送って玉砕したところとか。そもそもこれは何年前からスタートだったんですか?

2017年8月に協会がスタートし、ボードゲーム作成は2017年12月ごろからスタートしたのでまだ2年ほど前の話です。
当時はSDGsが今ほど認知されていない状況だったからこそ、ワークショップに来る人は意識高い!
そこで広報やメディアで働いている人と出会ったり、今使っているオフィスについても、ワークショップに参加されたDMM担当者の方と繋がって一緒に何かやろう!ということから今に繋がっています。

ーDMMオフィスもボードゲームがきっかけだったんですね!

はい、そうなんです。ボードゲームに関しては、ワークショップの参加者からのつながりが多いですね。会の繋がりの中には、ワークショップに限らず、営業やイベント参加による名刺交換など、様々なアプローチから繋がった事例もあります。

ハードウェアコワーキングスペース
https://akiba.dmm-make.com/

ー今では、いろいろな支援団体とのつながりをお持ちだと思いますが、どのようにして関係性を紡いできたのでしょうか。その際こだわったり意識したポイントもあればお聞かせください。

当協会代表の方針でもあるのですが、とにかくつながった縁は大事にするようにしていました。
出会った人には誠実に対応すること、返信があったものはスピーディに返信して、会える人には可能な限り対面で会って、一個一個つながった縁を大切に足を運びました。
(アポは業務時間中のため)平日の昼間だったので大半は代表で、自分(山田さん)や一部メンバーがお昼の時間を使ってアポに行っていました。

ーその中でも特にJINとの出会いはボードゲーム認知向上の大きなきっかけだったかと思います。何か具体的なエピソードがあればお聞かせください。

JINと繋がったきっかけはなかなか強烈で(笑)
シンラボ会員の隼野さんの営業力がすごく高くて、細い縁をがっつり手繰り寄せて紡ぎ出すプロで。たまたまあるイベントで知り合った方が、JINの専務理事(当時)と仲が良いというところから国連開発計画(以下、UNDP)と一緒に「SDGs Holistic Innovation Platform(SHIP)」を運営しているJINさんのことを知って、ここと絶対繋がろうとSDGsのボードゲームの話やアピールしたい旨を伝えて、そこまでいうならとご紹介いただきました。

ーすごいですね!(笑)
今はすごく関係性があるけど、なかなかそこまでの関係を構築するのは大変だったのでは?

大変でしたね。
繋がってからは、頻繁に足を運んでボードゲームの相談をして、親身になって話を聞いてくれました。
…とは言ってもこちらは素人、向こうはプロなので、結構なボリュームで指摘をいただき改善を繰り返していったんです。そのやり取りの中で、専務理事の方が2週間後にニューヨークに行く予定があると伺いました。
この日に(提案した内容を)持ってきてくれたらUNDPでプレゼンしてあげると言っていただいた夜にすぐメンバーに電話しまくって、短期間でしたが昼夜問わずメンバー10人弱ほどでなんとか対応してプレゼンいただくことができました。

ー2週間でJINもびっくりしたのでは?

それがよかったんですよ。
後から聞いた話では、飛び込みで来る方は多くはないがいる中で、そういう風に言ったことをすぐ改善することは滅多にないそうで、信頼に繋がったと伺いました。

…ちょっと懐かしいな。

ーゲームの認知度がないところから展開するには、乗り越える壁も多そうですが、特に印象的だったエピソードあればお聞かせください。

いろいろ覚えていることはあるけれど、たくさんありすぎて(笑)
ドイツで開催されたイベント(※1)に参加したきっかけの話をすると、5月開催の1ヶ月前の3月末ごろにJINからメールが来たんですよ。
ドイツでこういう国際イベントがあってよければ出展しませんか、と。

もちろん協会の予算は出ないし自腹で行くことになるし、GWの1ヶ月前でどれだけ集まるか思っていたら、さすがシンラボメンバー!5名ほど手が上がり行くことになりました。

ーさすが、皆さんの熱意がすごいですね!

そこで大変だったのは、やはり海外での展示会ということ。
先ほどの話であったように、UNDPにプレゼンするということで一部のカードやルールの英語化を進めていたものの、ほとんどが日本語でした。4月中は地獄でしたね(笑)
ルールや説明の仕方をはじめ、出発する飛行機の中、空港や現地に行く途中もミーティングやカードの準備をしたりしていました。役割分担の相談や、ルールも全員が理解していなかったりして、その辺りも含めて前日まで準備していました。

ー前日まで準備で大変だったかと思いますが、実際の展示会ではどうでしたか?

結論から言うと、反響はとても良かったです!
開催期間の3日間、2テーブル各5人程度で入れ替わりながら、おそらく100人以上の方にプレイいただきました。
参加した方向けに用意した「感想ノート」のコメントには、普通のゲーム(競争)でなく協力してことを評価する感想が多く、中には英語訳がよくないから自分が直してあげると言う人もいました。
良い人がおおかったですね。

あと、日本人の信頼があるのか、アジア系の方から(イベントの後も)一緒に何かやりませんかという人が多かったです。参加いただいた方々に関してはアジア系に限らず様々な方々にプレイしていただきました。

ー1ヶ月で準備して、プレイできる状況になったのはすごいですね。

そうですね、準備していただいたメンバーに関しては本当に凄かったです。
あとは、アジア系の中でも日本人であることをアピールするための工夫もしていました。
わかりやすいのは服装だ!と、出発する1週間ほど前に全員浴衣を着ることを決めて急遽準備して、結果的にはすごく良かった。
JINの方も少し引いてましたね(笑)

ー国際イベントで浴衣を着るとは、なかなか斬新なアイデアですね!笑
ボードゲームに取り組む上で、ドイツの展示会の前後で変わったことはありますか?

国際的な反応は増えましたね。海外からの問い合わせも出てきたり、具体的には台湾版のボードゲームを作ったりしています。
あとは、分かりやすくアピールできる実績ができたのが大きいですね。個人でワークショップを開催しているのとはレベルが違うので。

また、新しい縁ができたのも良かったですね。UNDPの方と直接の繋がりができたり、ドイツでできた友人は現地でボードゲームを手伝ってくれたり日本で行ったシンラボのイベントにも参加して下さいました。他にも、大学の教授との共同研究や、続けて海外のイベント(※)参加の招待にも繋がりました。
※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により中止。当初は、2020年9月にスイスで開催予定

ー最初はノリで始まったボードゲームが、実際にここまで反響になるのはすごいですね。

やはり、阿部さん初め、開発メンバーなどの力は大きいですね。

ーシンラボとしても大きな取り組みであるボードゲーム。認知拡大・展開のためにはまだまだやることは盛りだくさんと思います。今後の展望についてお聞かせください。

代表などと話を詰めているわけではないですが、個人的にはボードゲームはあくまでツールだと思っていて、そこまでアピールしていくつもりではありません。
協会やシンラボの活動をアピールしたり、世の中と繋がっていけるきっかけにして協会のビジョンに繋がる形に生かしていきたいです。
ぶっちゃけた話、かけたお金は取り戻す必要はあるが、無料公開してもいいと思っています。

また、もっとシンプルな子供向けのボードゲームを教育向けや家庭で気軽にできるようにする目的に作成し、先日こちらで公開しています。
【おうち時間でSDGsを学ぶ】お子様向けSDGsボードゲームの無料配布をスタート

コロナで延期となりましたが、ドイツで開催したもの(国際イベント)を日本でもやろうという話が上がっていて出展を提案いただいたり、いろんなつながりを作るきっかけになるツールとして、今後もボードゲームの可能性が広がると期待しています。

ー最後にこのインタビュー記事を読まれている読者の方へメッセージをお願いします。

ボードゲームの内容に関しては別のメンバーが話すと思いますが、
ボードゲームに限らず、まずはやってみることがどちらかというと話したいことですかね。

(協会・シンラボの活動として)ボードゲームが目立っているが、これまでもいろいろとやってみて、失敗もしてきました。むしろ、それで全然いいと思っています。
まずは手を動かしてやってみると、思いも寄らないところで結果になったり、笑われても、反対されてもやってみることが大切です。

こう言う話を聞いて、いろんな個人や企業の方とのつながりがまた増える気がします。
いろんな可能性を秘めているボードゲーム、今後がますます楽しみですね!


全12回の連載予定のSDGsボードゲーム制作秘話の第6弾は、草場さんから団体依頼の受注開始したお話について詳しく伺っていきます。次回お楽しみに!

※1:ドイツで参加した国際イベントについて
正式名称は「SDG Global Festival of Action 2019」です。SDGsに向けた行動促進を目的に、ドイツ連邦経済協力開発省 (BMZ) やドイツ連邦外務省をはじめとするパートナーの支援のもと、2017年から毎年開催されている国連主催のイベントです。
https://globalfestivalofaction.org/

この記事を書いた人
井上
エディター