化学業界におけるSDGs活動
新年あけましておめでとうございます。
シンラボ広報の福田です。
12月末にシンラボユースの神山君が中心になって企画した「ぼくらの世界を変えるアイデアソン-サイエンス×テクノロジー×SDGs-」が開催されました。学生向けのイベントでしたが、私は「化学業界におけるSDGs活用事例」というタイトルで関連する情報をインプットさせてもらいました。
折角なので、その一部をまとめておきます。
目次
CO2の資源化というゲームチェンジ
CO2はどうしても悪者のイメージが強いです。何とか地球温暖化を対策するために、地中への固定化や排出量削減などが検討されています。一方、CO2を資源として活用しようという流れも強くなってきています。
例えば、東大を中心として、清水建設、大阪大学、宇部興産、古川電気興業、理化学研究所が共同で立ち上げたプロジェクトでは、電気化学セルを用いるアプローチで、CO2から高付加価値の化学原料を作ろうという挑戦をしています。
CO2は炭素と酸素の混合物でありますが、結合エネルギーが強く安定した物質です。そのため、オゾン層まで破壊されずに飛んでいきます。ただ、この安定したCO2を電気の力で分解して、炭素や酸素を化学原料に作り上げていくのです。非常に夢がある技術で、是非早期に実用化してもらいたいです。
https://www.furukawa.co.jp/release/2020/kenkai_20200909.html
ライフサイクルアセスメントという考え方
製品のライフサイクル全体でCO2排出量を考えていこうという流れも強くなっています。部品生成や組み立て、製品輸送や使用、リサイクルの全部の工程全体でCO2排出量を管理していこうという流れになっています。
例えば、Apple(https://jp.reuters.com/article/apple-carbon-idJPKCN24M354)は下記のようなプレスリリースを出しています。
・Appleは製品やサプライチェーンなど同社のビジネス全体で2030年までにCO2排出量を実質ゼロ
・再生可能エネルギーへの移行などを進め、 CO2排出量を75削減。残りの25%は植林や動植物の生息環境保護などの取り組みで補完
また、マイクロソフト(https://news.microsoft.com/ja-jp/2020/01/21/200121-microsoft-will-be-carbon-negative-by-2030/)は下記のように言っています。
マイクロソフトは、2030年までにカーボンネガティブを実現し、2050年までに1975年の創業以来、自社が直接的および電力消費等によって間接的に排出してきたすべてのCO2を環境から除去するというものだ。自社の直接排出だけでなく、サプライチェーン全体の排出も削除する
主張はすごく正論で世の中全体でCO2排出量を削減していこうという流れは良いことです。また、こういった強いメッセージを出せる企業はビジョンがしっかりしています。
水の浄化
日本に住んでいると実感はないですが、世界全体で考えるときれいな水の確保は死活問題です。現時点でも22億人が管理された飲料水を使えないのが実情です。また、47億人がトイレなどの衛生施設を使えないのです。
そういった課題に対して、多くのメーカーが価値提供をしています。例えば、ヤマハクリーンウォーターシステムは微生物や藻類の光合成を利用して、濁度の高いセネガル川の水をWHO飲料水基準ガイドラインをクリアする水に浄化するシステムを販売しています。
https://global.yamaha-motor.com/jp/news/2018/0216/cleanwater.html
抗ウイルス対策
今年は特に抗ウイルス対策製品が山のように出てきました。新型コロナにも効果を発揮すると実証されている関西ペイントのしっくい(https://www.nishinippon.co.jp/item/n/651481/)です。
今では使っていないところも増えましたが、しっくいとは校庭の白線を引いていたやつで我々の身近な製品です。実は水に触れると強アルカリになって、色々なウイルスを無害化してくれるのです。今はこういった製品が本当にありがたいです。
企業連携による廃プラ問題
コンビニやスーパーのプラスチック袋の問題が身近なのですが、多くの企業などとの連携が必須になってきます。例えば、クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンスという連携体制では下記のような目標で活動を進めています。こういった体制を作ることで一社だけで実現できないような大きな社会の流れを作っていくことができるのです。
https://cloma.net/activities/
1.素材・製品の開発・生産・使用を通じて、SDGsの達成とクリーン・オーシャンの実現
2.「使用済みプラスチック製品の適切な回収・処理の徹底」と「3Rの深化とより環境負荷の低い素材・製品への代替」
3.技術、ノウハウ、経験を会員間で最大限共有し、大きなイノベーションの創出
4.技術開発と社会システムの組み合わせの最適化
5.素材を循環利用し、環境負荷を低減するジャパンモデルを世界に発信するとともに、各国の国情に適応する形で展開します
プラネタリーバウンダリー
意外と知られていないのですが、「プラネタリーバウンダリー」とは人類の活動がある閾値または転換点を通過してしまった後には取り返しがつかない「不可逆的かつ急激な環境変化」の危険性があるものを定義する地球システムにおけるフレームワークの中心的概念のことです。
http://cger.nies.go.jp/cgernews/202012/360002.html
これを見てみるとリンや窒素が大きな問題になっているのです。この窒素やリンは食糧生産のために化学肥料製造工程で大量に発生するのです。それが作物と共に土壌から流れていき、多くの環境問題を発生させるのです。
ただ、食料を安定してたくさん作るためには必要なもので、食糧確保と環境問題の両立が非常に厄介な課題なのです。
当日話をした内容はまだありますが、今回はここで終わりにします。また、次の機会で多くのSDGs活動を紹介していきます。
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