未来を創る、テックコミュニティー

見た目だけじゃない!?挑戦者を支えるファッション~宇宙服と宇宙の新たな可能性~

シンラボ編集部
2019/09/16

※本記事は、未来技術推進協会ホームページにて2018年9月7日に掲載されたものです。

2018年は宇宙旅行が現実的なものになり、宇宙ビジネスがより発展してくると言われています。
当協会ではAI(人工知能)やVR(仮想現実)、量子コンピュータなど指数関数的に発展していくと予想されている技術(エクスポネンシャルテクノロジー)に注目し、この技術を用いて社会課題の解決をしようと活動しています。
宇宙に関わる技術も今後発展する技術になると捉え、9月9日に「宇宙旅行に何着ていく?」宇宙旅行と宇宙服トークショーの開催も決定しています。
そこで、2018年4月29日にも行われた 未来技術シンポジウム × Kanattaにもパネラーとして登壇された大貫美鈴様にインタビューを行うこととなりました。


イベントの見どころは?

まずはじめにお聞きします。ずばり、9月9日の宇宙イベントの見どころは?

今後続々と出てくる宇宙服です。
この宇宙服というのは宇宙へ行くための宇宙服ですが、それは地上での訓練でも使われます。
基本的に宇宙服というのは、機体と一緒にデビューするんですよ。機体に合うように開発されているからです。ロシアのソユーズだと白いソコール宇宙服、アメリカ(NASA)のスペースシャトルだとパンプキン色のACES宇宙服がそれぞれセットですね。

Boeing(ボーイング)社のスターライナーや、SpaceX(スペースエックス)社の有人ドラゴン宇宙船、Virgin Galactic(バージンギャラクティック)社のサブオービタル機スペースシップ2、Amazon(アマゾン)社の宇宙会社であるBlue Origin(ブルー・オリジン)社のサブオービタル機ニューシェパードがデビューするのに合わせて、それぞれの宇宙服も開発されてきました。

各社それぞれの宇宙服が出るんですね。

そうですね。
宇宙旅行はB2Cビジネスの典型です。
政府の宇宙開発と違うのは、宇宙旅行客が機体や宇宙服を選ぶという行為が出てくるというところにもあります。
スペースシップ2とニューシェパードのサブオービタル機だけでなく、スターライナーと有人ドラゴンの2つのオービタル機も、宇宙飛行士が搭乗するだけでなく宇宙旅行に活用される予定です。
宇宙服においては有人ドラゴン宇宙船は白地に黒のラインのスーツで、スターライナーではボーイングブルーと呼ばれる鮮やかな青いスーツです。機体はどちらも同じカプセル型ですが、脱出システムなど設計思想が違うところがあります。

商業の宇宙開発では、宇宙服の信頼性・安全性はもちろん、快適性やデザイン性も求められるようになります。
宇宙旅行を提供する側もサービスやホスピタリティという今までになかったキーワードが入ってくることも宇宙ビジネスならではですね。
たとえば、ヴァージンギャラクティックの宇宙旅行を販売している日本の代理店では、スペースシップ2をチャーターすることにより、日本のお客様のために日本語サービスの宇宙旅行を提供しています。
宇宙旅行客の個人の希望がどれだけ反映されるところにビジネスチャンスが生まれると思います。
もちろん機体が注目されることが多くて、宇宙服に関心は向かないかもしれません。しかし、宇宙服は写真や動画に残ることでも重要ですが、何よりも安全で快適な宇宙旅行の実現に貢献します。
なので、このイベントの見どころは宇宙服ですね。

今までにない発想ですね。

もうすでに宇宙旅行に申し込んでいる人は世界に1000人以上もいます。そいういう人にとっては、すでに宇宙旅行は始まっていて、宇宙旅行を待つ間の準備をしています。準備のための訓練では、訓練仲間ができることも多いので、そこから始まる交流の機会も楽しみの一つだったりします。

すごい。宇宙旅行にますます行きたくなってきました。

宇宙ビジネスに興味を持ったきっかけ、会社を設立したきっかけは?

大貫さん自身のお話をお聞きしたいんですが、宇宙ビジネスに興味を持たれたきっかけは?

建設会社でたまたま宇宙開発に関わることになったのですが、最初は難しそうでどうしようと思いました。でも宇宙でも地球にいる時と同じように衣食住遊が必要で、それならエンジニアでもない自分にも取り組める分野があるかもしれないと気づいてから身近に感じられて面白くなったのがきっかけです。

宇宙では、無重力や真空という要素が加わることで新たな視点が出てくるんです。
専門となる分野がないからこそ、広い視野で宇宙に関わることができたのかもしれませんね。

そこから会社を設立したきっかけは?

建設会社を退職した後、アメリカに1年間滞在していました。その年は、アメリカでは、XPRIZE(エクスプライズ)財団のコンテストでスペースシップ1が宇宙飛行を達成する前年で、いろんな宇宙ベンチャーの大きな動きがありました。そして、2004年の9月と10月、スペースシップ1が2回の宇宙到達を達成してXプライズ賞を獲得、その年の末にはアメリカで宇宙旅行を可能にする商業宇宙打ち上げ改正法が成立しました。スペースシップ1の宇宙飛行を現地で見ていて、民間の宇宙開発の時代が来ることを確信しました。

アメリカの早い動きを見たから、会社を設立した?

面白いことがしたいというだけだったんですよね。
好奇心の赴くがままみたいなところがありました。
キャリアロードマップはなくて、気がついたら長い間取り組んでいたという感じです。
面白いものを見つけることや、自分ができるかなという感性は大切にしていて、それを信じて決めたことをしています。

宇宙コンサルタントの仕事とは?

話はかわりまして、今のお仕事について聞かせてください。
宇宙ビジネスコンサルタントとはどのようなお仕事ですか?海外にも頻繁に行かれているようですが。

何をしている人かわかるように宇宙ビジネスコンサルタントを肩書にしました。
アメリカで活発に活動している宇宙ベンチャーの民間の活動が世界に広がっていくと思っていたので、民間の宇宙開発を立ち位置に活動したいと意識しました。

商業宇宙開発は政府の宇宙開発と異なり、宇宙開発を事業とすること、宇宙を利用することでマーケットを創ること、また、今あるマーケットを拡大することが求められます。商業宇宙開発の進展で、新たなビジネスや投資が促進されて新たな雇用の創出につながり、それは今、日本を含む世界に広がっています。
宇宙ビジネスコンサルタントとして事業開拓、市場開拓を目指した取り組みを行っています。

宇宙グッズの販売もしているんですよ。宇宙テディベアなど、主に女の子向けのグッズを扱っています。
物品を扱い始めたときは、宇宙グッズは男の子向けのものがほとんどでした。
宇宙開発というと途端に難しく感じてしまいがちなので、宇宙服の関係でファンションショーや宇宙グッズなどを通して女性にも興味を持ってもらえる良い機会になればと思っています。

女性だからこそ活躍できるポイントはある?

私達未来技術推進協会では、理系の女性を盛り上げたいという思いで女子部を立ち上げてまさに入り口を作ろうとしています。
宇宙ビジネスにおいて、女性だからこそ活躍できるところはありますか?

男性、女性はあまり関係ないと思っています。それも含めた個性を大切できればと心がけています。
同じ技術系でも、男女で着眼点が違うこともあると思います。
それぞれの個性があるからこそ、シナジーが生まれるのだと思います。
個性を活かしたチームを作ることが重要ですね。

20~30代の若手技術者に期待することは?宇宙ビジネスが社会課題にどう貢献する?

それぞれの個性を活かし合うことが重要ということなんですね。
未来技術推進協会では20代~30代の会員が多いのですが、20代~30代に期待することと、宇宙ビジネスが社会課題にどのように貢献すると思うかお聞かせください。

技術や宇宙を単独で見るというよりは、技術や宇宙を使うと思って物事を見ると良いと思います。

今、デジタルを活用した変革が進行しているデジタルトランスフォーメーションの只中で、そこに宇宙利用がいかされることが期待されてます。 宇宙からの観測データとAIを組み合わせたビックデータが農業や漁業、輸送、エネルギー、建設などあらゆる産業に新たな価値をもたらします。

一方で、今回のテーマである宇宙服も人類の宇宙活動の可能性を拓きます。思えば、潜水服、耐Gスーツなど、深海へ、そして空へと人の挑戦の場には必ず特殊服があって、着るもののテクノロジーもあって可能になってきました。
宇宙においても、宇宙服によって私達が活動できる領域が広がっており、それが宇宙旅行のような商業の活動であればファッション性ももちろん重要です。特殊服の技術は人の活動領域を広げ、未知の場へ行くのに必ず必要なもので、人類の可能性を拡げます。

乗り物に目が行くのは当然でよいのですが、私達の挑戦を可能にしているという見方で宇宙服にも注目してもらえれば良いと思います。

インタビューを終えて

まさに宇宙の可能性を感じる時間となりました。
宇宙服が機体に合わせて開発されていて、宇宙機と一緒に世の中に出てくることや、日常に宇宙で取得したデータが既に活用されてきていることなど、学ぶところも多くありました。
2018年は新しい宇宙輸送機のデビューとともに宇宙ビジネスがさらに発展することが期待されている年であり、そして宇宙旅行の実現も待たれています。ぜび、宇宙服にも注目してみてください。

大貫美鈴さんのHPもチェックしてみてください。
・大貫美鈴さんのHP
http://onukimisuzu.com/
・Twitterもやっています。フォローもぜひ!
https://twitter.com/mszmail

この記事を書いた人
シンラボ編集部
エディター