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SDGsボードゲーム制作秘話・第9弾 デザイン・アイテム作成秘話を通じた、ボードゲームに具現化された想い

すわ
2020/08/10

今回は、未来技術推進協会(以下、協会)オリジナルのSDGsボードゲーム「Sustainable World BOARDGAME」のデザイン及びゲームアイテム制作全てを監修・推進された、児玉さんへのインタビュー記事となります。

SDGsボードゲームが多くの方に受け入れられて、楽しく格好良く没頭してプレイができるように細部まで洗練されたデザインとなっている想いや、今後の展望まで語っていただいた内容をお伝えします!

インタビューは奥野、ライターは諏訪が担当します。

ーまず、SDGsボードゲームのデザイン全般を担うことになった時の想いを教えてください。

代表から打診があった本当に最初の時は、SDGsというものすらほとんど知らず、ゲームの設計をした阿部さん(第2弾インタビューご参照)からコンセプトの話を伺って、そこから着手しました。自分自身はボードゲームやカードゲームもそこまでやったことはなかったので、何からどう手を付けてよいのか。。というのが正直なところでしたね。

阿部さんから話があったのは、SDGsの概念を表す「ウエディングケーキモデル」をゲームに落とし込みたいというものでした。このモデルは、「環境」「社会」「経済」をケーキに見立てた階層で表現したもので、これをどのようにデザイン上でわかりやすく表現するかを試行錯誤しました。結果的には、現在のデザインでもあるように、「四角」「マル」「手裏剣」で表す形で練っていきました。

ーひと目見ただけでわかりやすく区別しやすいデザインですよね。これに付随して、特にデザインをこだわったポイントというのはありますか?

大きくは3つありまして、「SDGsっぽさ」、「視認性」、「環境へ配慮した素材」です。

まず1つ目の「SDGsっぽさ」は、基本的には国連が提唱しているガイドラインに沿いながら、「色」「フォント」「フラットデザイン(影や輪郭を使わず平面的なデザイン)」の3つの観点を大事にしながら、ボードゲームに落とし込んでいきました。
色は17色という多くの色を織り交ぜながらも、ごちゃごちゃしないように調和させるのがかなり大変でしたね。

ー確かに、多くの色を使っているのに雑多な感じが全然しなく、馴染みやすいのが凄いと感じていました!

かなり意識した部分でもありましたので、それは嬉しいですね。実際は、SDGsには白地に明るい青というテーマカラーがあるので、これをベースに取り入れたり、カードの裏面は色彩豊かにして表面は大きく一色を使うなど色々と試行錯誤しながら色味を調整しました。

ー少し違う観点にはなるのですが、コマやトークンの材質にもこだわったと伺っていて、そちらもお聞かせください。

最初は、ボードゲームとしてのコンセプトをいかに形にするか、統一感を持たせるにはどうするかということを重視して、まずはボードゲームをモノとして具現化することを優先し、アクリルやプラスチックも使っていました。一度作った上で、次の段階として先程話した「環境への配慮」に向けて、プラスチックを使わず認定された間伐材に素材を置き換えて、環境にも優しいボードゲームとなるように試行錯誤していきましたね。

ー段階的に改良しながら今の形になっているのですね。もともと最初の段階では、デザインに関する知識はご自身で身につけたと伺ったのですが、そのあたりも教えてください。

元々はデザインに使うアプリ(PhotoshopやIllustratorなど)を扱った経験はあったのですが、デザインの体系的な知識や経験があったわけではないので、独学で勉強していきました。人の視覚や視線がどう動くかを元にしてカード上の文字や図形の配置を考えたり、人が扱いやすい大きさや形のバランスはどんなものがあるかなど、「視認性」の部分は様々な方のフィードバックを得ながら改良していきました。

最初は名刺大だったカードもトランプサイズにしたり、さらに読みやすくするために一回り大きくしたりなど、実際にプレイされた方の生の声を受け取り、求められるものを取り入れながら進めていきました。フィードバックをお願いした方々のレスが早く、こちらもそれだけ早くレスをくれるならしっかり反映しよう!とモチベーションも上がりましたね。

ー多くの方と連携しながら組み上げて来たのが凄く伝わります。プロトタイプのときは、児玉さんがコマを手作業で作っていたと伺ったのですが。

今はもう外部に発注しているので前の話にはなるのですが、協会のオフィスが入っているDMM.make AKIBAの10階が専門の機材も備えた作業スペースになっているんですね。元々協会でも使わせてもらっていたこともあり、担当の方が親身になって使い方や改善点などを教えてくれたのが助かりました。アクリルの板をレーザーカッターを使用して2cm角に切り、その一つずつにUVプリンター(紫外線光によりインクを瞬時に硬化させ、用紙や素材へインクを定着させるプリンター)を使ってプリントして色味やバランスを調整してコツコツやっていました。

ー地道な作業がボードゲームの核になっているんですね。児玉さん自身が面白さや達成感を感じるポイントはどんなところでしょうか。

私が達成感やモチベーションが上がるところが、「自分の頭の中にあるものを形にすること」なんですね。何かをゼロから作り、それを形にして磨いていくということに喜びを感じます。なのでその過程で試行錯誤することや地道に改良していくことを楽しみながら、自分の理想とするところの90%以上は再現できたんじゃないかなと思っています。

ー今まで話していただいたところ以外で、こだわったポイントなどはありますか?

ロゴマークのデザインはお伝えしておきたいです。(下図参照)

Sustainable World BOARD GAMEという文字の周りに四角が散りばめられているのですが、これがSDGsの17目標に対応していて、ロゴの上が「社会」、左下が「経済」、右下が「環境」、一番下が17番目の目標であるパートナーシップが支えていることを表しています。

また、白地に青という全体のテーマカラーを据えながら、文字の後ろにある輪っかの重なりで、性別や価値観、SDGs活動への選択肢など様々な対の概念が調和しているという意味を表しています。このロゴに、SDGsそのものやボードゲームを活用してどんな貢献をしたいかという想いを込める形でデザインしました!

ー今後に向けて活動している内容を教えていただけますか?

まずは世界展開ということで各国版の作成を進めていて、台湾版を皮切りに作成しています。修学旅行を含めて実際に行っている感覚になるように、現地の地図を元にしながら地域性がでるように作成しています。
あとは、逆に日本国内の詳細化ということで、都道府県版の作成を進めています。目標は47都道府県全て作ることを見据えていますね。

ーそれはかなり広がりますね。実際に見たことがない国や地域もあると構想や作成は難しいと思うのですが、どのように進めているのですか?

そこはシンラボのコミュニティとしての強さで、台湾出身の方や、地図作成のスペシャリストの方、ドイツ語や英語など語学が堪能な方がいらっしゃるので、国や地域の特色や現地の人が喜ぶような主要な場所などの情報が入り、それをボードに反映したり、イベントやカードの内容も特色をうまく捉えてカスタマイズしたりできているのが面白いです。各国版、地方版の完成も楽しみにしていてください。

ーかなり幅広く勉強やチャレンジもされながら楽しんでいるように見受けるのですが、児玉さんの原動力を教えてください。

先程とも重なりますが、「自分の頭に浮かんだものを形にしたい」というところから、手段は二の次でとことん突き詰めて形作りたい想いが強いですね。思い浮かんじゃったらそれを形にしたいという欲求が止められず、調査したり得意な人に知恵や技術を借りたりしながら突き進んでいます。
その自分の気質に対し、協会やシンラボがニーズや意味を与えてくれている感覚です。それが形になったらこういった人達に実際に役立つ、もっとこんなニーズや可能性もある、と常に価値を提供できる先があるというのが自分としてはありがたいですね。

ークリエイター気質を存分に発揮されていて凄いです!協会としても、今後SDGs認定ファシリテーターを各地に輩出していく動きをしていますが、その核となるのは間違いなくこのボードゲームだと捉えています。

SDGsを知ること、自分ごとに捉えることにやはりボードゲームの寄与は大きいと思っています。今後はeラーニングで場所を問わず学習できる機会が増えるのですが、そこにボードゲームという知識と実践を結び付けられるものがあることは重要だと思いますので、SDGsが世の中に広まり、多くの方が自分の生活や仕事につなげる機会に貢献できるのは嬉しいですね!

「Sustainable World BOARDGAME」は、協会のメインコンテンツとして学校向けワークショップ、企業向け研修、さらにオフライン、eラーニングのファシリテーター認定講座を通じて日本全国へ「SDGsを自分ゴト化し、一歩を踏み出す」活動の推進に貢献しています。そして各国版の展開により世界中へ羽ばたいていくことが見えていますので、これからの発展がますます期待されますね。

次回は、村口さんにクラウドファンディングのきっかけや構想など様々なお話を伺います!お楽しみに!

この記事を書いた人
すわ
エディター