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宙から気候変動を観測~衛星データで分かること~

こんにちは、シンラボ学生メンバーのかみゆーです。

テレビでも毎日のように取り上げられている気候変動問題。実際のところ、地球温暖化はどのくらい進んでいるのでしょうか。

今月行われた国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)では温室効果ガス排出削減に向けた具体的な方法が協議されました。

温室効果ガス排出削減について、私たちも自分ごとにしていくことが大切になりますが、普段生活していて地球の変化を気にかけることはなかなか難しい面もあります。

そこで地球環境の様子を自分の目で確かめ、行動に移すためのきっかけを作ってくれるのが人工衛星のデータです。

今回は、近年手軽に利用できるようになりつつある人工衛星データを使った気候変動対策の取り組みと、私たちが手軽に人工衛星データを閲覧できるツールを紹介します。

気候変動を宙から見渡す

こちらは、今年の6月から7月にかけて発生したカナダ熱波の様子を撮影した衛星画像です。

2021年6月29日カナダ熱波の様子(写真:European Union, Copernicus Sentinel-3)

衛星に搭載されたセンサーで観測した地表面温度の分布から、画像内右下に位置するバンクーバーやシアトルなどの都市部で温度が高くなっている様子が見て取れます。

また、画像中央の山脈の東側では、気温と地表面温度が上がっています。このあたりでは上空の高気圧が暖かい空気を閉じ込める「ヒートドーム」という現象が発生したことで気温が高い状態が続き、リットンという村は、カナダの観測史上最高気温49.6度が観測されました。

次にお見せするのは、スウェーデン南部のスコーネ県を撮影した2つの衛星画像です。

スウェーデン、スコーネ県の2017年7月(左)と2018年7月(右)の比較。
熱波による乾燥が見られる。(写真:Rymdstyrelsen / Google / ESA)

左側の2017年の画像に対して2018年の画像では大部分で褐色が見られます。これは2018年に発生した熱波によって多くの樹林が枯れてしまった様子を写しています。

このように人工衛星によって定期的に地球の様子を撮影することによって、地球の変化、特に地球温暖化による自然や人間の活動の変化を調べることができます。

地球観測衛星の仕組み

地球観測衛星は、地上から反射・放射した電磁波をセンサで感知することで、地球上の様々な現象を捉えることができます。電磁波は波長の違いによって紫外線、可視光線、赤外線、電波に分けられます。

地球から放射される電磁波の種類(筆者作成)

このうち可視光線は人間の目で見える領域の電磁波で、衛星に搭載されたカメラでは、地球から跳ね返った可視光線を観測しています。ほかにも紫外線を観測できるセンサではオゾン層を観測したり、赤外線を観測できるセンサでは地表や海面の温度を観測したり、電波の跳ね返りで地表の様子を観測できたりします。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、長期間にわたり気候変動観測を行う衛星「しきさい(GCOM-C)」を運用しており、大気組成や植生分布などの観測データが将来の気候変動予測に活用されています。

出典:JAXA, センサの違いで見る(可視光・赤外・電波)

衛星データを利用した気候変動対策

気候変動対策への具体的な取り組みが各国に求められている中、国内では衛星データを利用したプロジェクトが産学官で進められています。

今回は、一般財団法人リモート・センシング技術センター(以下、RESTEC)によるブラジルでの違法伐採監視の取り組みを紹介します。

RESTECは、国際協力機構(JICA)ODA事業のもと、ブラジル政府機関に対して、違法伐採監視のシステムの構築と技術指導を実施しています。

雲を透過できる合成開口レーダーで撮影された熱帯雨林を時系列で比較することによって、違法伐採が行われている地域を抽出することができます。

RESTECの協力によって政府機関は伐採情報を地元の警察にスピーディかつ正確に伝送できるようになり、効率的な検挙活動が可能となったことで違法伐採面積の減少に貢献したそうです。

出典:内閣府|衛星データをビジネスに利用したグッドプラクティス事例集【第1版】国内事例10

衛星データはどこで見れる?

政府機関や宇宙産業に関わる大きな会社が打ち上げているイメージのある人工衛星ですが、衛星データプラットフォームのサービス提供によって近年は私たちも手軽に衛星データを利用できるようになりつつあります。

衛星データプラットフォームが登場する以前は、個人で衛星データを利用するためデータを提供している機関を探したり、膨大な画像データをダウンロードしたりする必要がありました。また、解析するためのツールと高度なプログラミングスキルが必要でした。

しかし、Google Earth EngineAWS Ground Stationなどの衛星データプラットフォームでは、クラウドベースでデータのインポートや解析を行うことができ、利用を始めるまでの負担が大きく軽減されました。

国内では、経済産業省の「政府衛星データのオープン&フリー化及びデータ利活用促進事業」の取り組みとして、さくらインターネット株式会社が2018年度にプラットフォームTellusを公開しました。ノーコードで衛星データを閲覧できるTellus OSやデータ解析開発環境が提供されており、利用できるデータの拡充や利用者が開発したアプリケーション、アルゴリズムを売買できるマーケットの整備が進められています。

また、自分で解析を行うことなくまずは衛星画像を眺めてみたいという場合は、JAXA提供のG-Portalや、欧州宇宙機関(ESA)運用衛星などのデータ加工を行っているSentinel Hubが提供するEO Browserもオススメです。

Google Earth Engineで地球環境を観察したい

特に最近筆者は、Google Earth Engineを利用して10年、20年単位での地球環境の変化を観察してみたいと思っています。

10年、20年というのは地球の歴史から見ればほんのわずかな期間ですが、衛星データを通して地表面温度の上昇や海面上昇などが観察されれば、地球温暖化の影響をよりリアルに感じ取ることができそうです。

Google Earth Engineを選んだ理由は、時間的、空間的に提供されているデータが多く、利用を始めるためのコストがほぼないためです。

Googleアカウントさえもっていれば1分以内に利用登録を完了させることができ、無料で手軽に衛星データに触れることができます。

Credit : Google Earth Engine

皆様も衛星データに関心をお持ちであれば、まずはプラットフォームを利用して衛星画像を眺めてみるところから始めてみてはいかがでしょうか。

次回以降の記事では、Google Earth Engineを用いた衛星データの閲覧や解析手順を説明し、森林の増減が把握できる植生分布解析の方法を紹介していきます。

ぜひご期待ください!

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